北海道「十勝千年の森」ファームガーデンだより 麗しき花摘み庭の喜び 第2回(全7回) 十勝千年の森には「カッティングガーデン」という、摘んで飾るために草花を育てる花壇があります。ヘッドガーデナーの新谷みどりさんが繰り出す植栽プランは「ラスティックビューティー」そのもの。いくつもの喜びに出会える花摘み庭の魅力をご紹介します。
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世界中で注目されるラスティックという美
涼しげなブルーとトゲトゲの形がなんとも愛らしいエリンジウム。左奧の緑のエリンジウムは手前とは異なる品種で、右奥のエキノプスとともに、まだ蕾のうちに摘み取ったもの。ガーデンカフェの黒い壁とも絶妙にマッチ。十勝千年の森が大切にしているコンセプトは「ラスティックビューティー」。野趣があり、かつ洗練された美しい庭です。
当初、デザイナーのピアソンさんとガーデナーチームがイメージを共有するために使っていた言葉だそうで、「時間を経てきたもの、自然の影響を受けて変化していくものに美を見出す、日本のわび・さびにも通じる感覚でしょうか」と新谷みどりさん。
最近、欧米では農場などを舞台に、自然素材を多用した演出を行う「ラスティック・ウェディング」が流行していますが、十数年前から時代の先端をいっていたといえるかもしれません。
ファームガーデンでは来園者を迎えるため、ガーデナーが自ら摘んだ花を生けます。テラスの一角に置かれた作業台は格好のディスプレイ台でもあり、黒く塗装した木の壁を背景に、古びたバケツに花や葉物を生けたさまは、まさにラスティック。まだ蕾(つぼみ)のものや種をつけたものを飾って愛でるのも、いかにも十勝千年の森スタイルです。
「同じ花でも咲き始めと咲き終わりで色が変わるし、萎しおれてきた花を別の花に替えるとまた印象が変わります。そもそも切り花を両手いっぱい持つ経験なんて、なかなかないでしょう? 家にいる時間が長い今こそ、暮らしと庭をつなぐカッティングガーデンの喜びを知っていただけたらうれしいですね」
多種の花を混ぜたものと単一のグラスを組み合わせ、互いの魅力を引き出し合うスワッグ2点。手前はエキノプス、リアトリス、ネペタ、種をつけたペンステモンなど。結実までの「時間」を生けるのも十勝千年の森流。ツートーンカラーのワレモコウは品種不明で、新谷さんのお気に入り。奧はパニクム・ヴィルガツム。壁に掛けるスワッグは表と裏を意識し、弓なりにまとめていくのがコツ。 『家庭画報』2021年7月号掲載。
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