ミュージカルの極意“作曲家を通して作品を知る”
『マタ・ハリ』には、第一次大戦下に実在した人物が登場しますが、史実をモチーフにして新たに作り上げていく作品だと認識しています。
僕が演じるラドゥーは、フランス諜報局に所属する大佐で、いわゆるヒール役。ミュージカルで演じるようになってから11年目を迎えた僕にとって、完全に初めて挑戦する役どころです。
初演でもラドゥー役を演じた加藤和樹さんにはその風格が備わっているので、彼を見てたくさん学びたいですね。
演出家の石丸さち子さんによれば、ラドゥーは物語の後半では揺れ動いてボロボロになっていく人物とのこと。内面的に激しい役だと想定しています。今の年齢だからこそ出せる色を出していきたいですね。ラドゥーという役に出会えたことが、ターニングポイントになるのではないかと思っています。
本作の楽曲を手がけたのは『ジキル&ハイド』などで多くの名曲を生み出してきたフランク・ワイルドホーンさんです。
これまで彼の作品に6本出演させていただいて実感しているのは、泉のようにメロディーが湧き出る作曲家であるということ。
ラドゥーはソロナンバーが多く、久しぶりに彼の作品をたくさん歌う役なので、とても楽しみにしています。
過去にご本人ともコンサートで共演させていただきましたが、その場のインスピレーションをすぐに演奏に反映させ、目の前で既存の音楽が新たに生まれ変わることも間近で体感しました。
そんな貴重な経験も生かし『マタ・ハリ』の世界に臨みます。
田代万里生(たしろ・まりお)
1984年、長崎県に生まれ、埼玉県で育つ。東京藝術大学音楽学部声楽科テノール専攻卒業。2003年、大学在学中に『欲望という名の電車』で、本格的にオペラデビュー。2009年『マルグリット』のアルマン役でミュージカルデビュー。以後、数々の作品で活躍。第39回菊田一夫演劇賞受賞。2021年9月より『ジャック・ザ・リッパー』に出演予定。
ミュージカル『マタ・ハリ』
オリエンタルな容貌と美しいダンスでパリ市民の心を摑んだ「マタ・ハリ」。歴史にその名を残した一人の女性の物語を題材に作曲家フランク・ワイルドホーンの美しい音楽でドラマチックに描かれた本作は、2016年に韓国で世界初演された大ヒットミュージカルである。
日本では2018年に石丸さち子の演出で上演され、待望の再演が実現。柚希礼音と愛希れいか、加藤和樹と田代万里生、三浦涼介と東 啓介が主要人物であるマタ・ハリ、ラドゥー、アルマンの役をそれぞれダブルキャストで演じる。
東京建物Brillia HALL~2021年6月27日
S席1万3500円(全席指定)ほか
梅田芸術劇場:0570(077)039
URL:
https://www.umegei.com/matahari2021/※愛知、大阪公演あり
※この情報は、掲載号の発売当時のものです。最新情報は公式サイト等でご確認ください。 表示価格はすべて税込みです。
構成・文/山下シオン
『家庭画報』2021年7月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。