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自然の中で気持ちをリフレッシュ! 非日常で行う“リトリート”で心身を回復する【前編】

2021.06.10

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川野医師の診察室から


*実際の症例をもとに内容を変更して掲載しています。

【ケース・1】
気分が落ち込み、意欲低下。軽いうつ状態になり、受診すべきか迷っている



→近くの山にハイキング。それだけで元気を取り戻し、自分の力で回復できた

直接はお会いしていないのですが、私が知人から間接的に相談されたケースです。同僚のA子さん(40代)が「気分が落ち込んでしかたがない。休日になっても意欲がわかず、何もする気がしない。精神科を受診したほうがよいだろうか」と悩んでいるというのです。

詳しく様子を伺うと、週の半分は在宅ワークで家にこもりきり。しかし食事や睡眠に大きな問題はなく、軽度のうつ状態が考えられました。

そこでまずは「週末に近くでいいのでハイキングしてみてはいかがでしょうか」とA子さんへの伝言を頼みました。効果はすぐに表れました。「郊外の山で一日過ごしたら気分が入れ替わり、明るい気持ちを取り戻せたそうです」と知人から連絡が入ったのです。

目の前の問題を解決しようと頑張りすぎると、泥沼にはまって落ち込んでしまうことがあります。そんなときは現実から離れ、自然の中に身を置くことも解決方法の一つです。シンプルですが意外に即効性があるものです。




【ケース・2】
顔を合わせれば言い争い。夫婦の関係がぎくしゃくし夫と距離を取りたい主婦


→リトリートツアーに参加。自然の中で自分を見つめ、夫への感謝が生まれた

自らの工夫で夫婦の絆を再認識された女性の例です。定年を迎えたご主人が家にいる時間が増え、ストレスが増大したB子さん(53歳)。相手の言動がいちいち気に障り、口に出るのはとげとげしい言葉ばかり。しばらく一人になりたいと、高原のリトリートツアーに参加することにしました。

大自然の中で、日中はヨガや坐禅、野菜の収穫体験などを行い、夕食後は参加者が暖炉の前に集って思いを語り、瞑想で一日を締めくくります。2泊3日の短期間でしたが、日常から離れ自分自身をじっくり見つめたB子さんは、自分が余裕をなくし苛立っていたことに気がつき、同時にツアーに快く送り出してくれたご主人への感謝の気持ちが湧いてきたといいます。

余裕のない日常が続いていたら、B子さんは心のバランスを崩していたかもしれません。「帰宅したら夫が、表情が穏やかになったね、と。今度は夫も誘ってみようかと思っています」とうれしそうに報告してくださいました。




川野泰周(かわの・たいしゅう)さん


臨済宗建長寺派林香寺住職、精神科・心療内科医、RESM新横浜睡眠・呼吸メディカルケアクリニック副院長。1980年生まれ。慶應義塾大学医学部医学科卒業。精神科医療に従事した後、3年半の禅修行を経て2014年より実家の横浜・林香寺の住職となる。寺務と精神科診療の傍ら、講演活動などを通してマインドフルネスの普及と発展に力を注いでいる。著書に『人生がうまくいく人の自己肯定感』(三笠書房)ほか。公式ウェブサイト https://thkawano.website/
「寺子屋ブッダ」https://www.tera-buddha.net/
取材・文/浅原須美 イラスト/井上明香 撮影(川野さん)/鍋島徳恭

『家庭画報』2021年6月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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