【特別取材】天平の十一面観音を訪ねて 奈良・聖林寺の国宝と出会う 最終回(全3回) 大和の桜井、多武峰街道が山ふところに入る付近にある「聖林寺(しょうりんじ)」。名高い聖林寺の十一面観音は、かつては大神神社の最も古い神宮寺である大御輪寺のご本尊として祀られていましたが、1868年に聖林寺に移されました。フェノロサや岡倉天心が絶賛した、奈良時代に造られた木心乾漆のお像。尊厳のある輝く観音様です。
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「私どものお寺で忘れてならないのは毎年11月1日から30日まで開いている『マンダラ展』です。小品ですが、見る人を美しい曼荼羅の世界に魅入らせます。
南北朝時代の『春日鹿曼荼羅』『三千仏名会本尊』『補陀落山曼荼羅』。室町時代の『春日宮曼荼羅』『胎蔵曼荼羅』『當麻(たいま)曼荼羅』『十三仏曼荼羅』。
そして江戸時代の『星曼荼羅』『法華経曼荼羅』『金光明最勝王経(こんこうみょうさいしょうおうきょう)曼荼羅』『金剛界曼荼羅』と、どれも驚くほど保存よく伝えられています」(倉本明佳ご住職)
春日鹿曼荼羅春日大社の神鹿を描いた春日曼荼羅。春日大社への崇敬が奈良を中心として藤原氏以外にも広まるにつれ、「垂迹神(すいじゃくしん)曼荼羅」「本迹曼荼羅」「地蔵曼荼羅」「浄土曼荼羅」など新たな派生も生まれた。三千仏名会本尊過去、現在、未来の合わせて三千仏の曼荼羅を掲げて仏の名を唱え、その年の懺悔と感謝を捧げる仏名会。過去は釈迦如来、現在は薬師如来、未来は弥勒菩薩を中心に、それぞれ一千の仏様が描かれる。写真は未来の曼荼羅。春日宮曼荼羅平安時代末期から江戸時代にかけて作成された、春日大社や関連する事象を描いた神道曼荼羅である春日曼荼羅。春日山を背景として春日大社と若宮とその本地仏を描いたものは「春日宮曼荼羅」と呼ばれる。星曼荼羅釈迦金輪を中尊とし,周囲に九曜や北斗七星をめぐらす曼荼羅。「北斗曼荼羅」ともいわれ、第二院に十二星座を表す十二宮、第三院に二十八宿が描かれている。毎年2月3日の星祭り修法の際に掲げ、その年の厄除けを修し、開運を祈願する。「これらの曼荼羅は、大乗仏教の経典にかかわるもの、密教にかかわるもの、それに神仏の本地垂迹の思想を説くものと、3つの種類に大別されています。
どれも貴重なものなので、一つ一つ時間をかけて観ていただきたいですね」(倉本明佳ご住職談)
曼荼羅 特別公開毎年11月1日〜30日 秘宝マンダラ展
聖林寺書院にて、約15幅の曼荼羅をおかけします。