観音様がつないでくれた千年の歴史を未来へ
神鹿がきざまれた春日灯籠。「奈良の都から聖林寺ははるかに遠いですが、毎年1月に行われる若草山の山焼きの際には暗い北の空に赤い炎が燃え上がるのを見ることができます。
季節の花々に迎えられて本堂へ進むと、女性の守り神様である地蔵菩薩が祀られています。そして階段を上った先のお堂では、十一面観音菩薩像が天平風の切れ長の目でお寺を見守っています。この観音様は、もともと大御輪寺のご本尊でした。1868年に神仏判然令を受けた際、大御輪寺の住職が聖林寺で修行した学僧で、聖林寺の住職が兄弟子であったことから、聖林寺に大切に運ばれたといわれます。
明治時代にはフェノロサが可動式の御厨子を寄進され、1959年には鉄筋コンクリートで収蔵庫が建てられました。その収蔵庫も62年がたち、免震装置を設置したお堂への改修工事が始まります。観音様を愛する多くのかたに携わっていただき、仏縁をいただきながら、歴史を未来へとつなげていきます」(倉本明佳ご住職談)
〔特集〕特別取材─天平の十一面観音を訪ねて 奈良・聖林寺の国宝と出会う
撮影/本誌・坂本正行 取材・文/萬 眞智子 撮影協力/槇峯眞千子
『家庭画報』2021年7月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。