〔失敗事例3〕
「ボディメイクのためにプロテインを愛飲。これでたんぱく質の補給も安心です」〔久野先生の回答〕
たんぱく質を合成するには、ほかの栄養素も必要。食事からの摂取が基本です。筋トレなどで体を引き締め、程よい筋肉をつけていくボディメイクを行ううえで、筋肉の原料となるたんぱく質が欠かせないことはよく知られるようになりました。
そのため、女性の間でもたんぱく質を効率的にとれるプロテインに注目が集まっています。
しかし、プロテインは食事だけではとりきれないたんぱく質を補うための補助食品であり、食事からの摂取を基本としたいものです。
というのも筋肉を合成する過程ではビタミンB6、B12といった微量栄養素も必要で、これらは肉や卵などたんぱく質が多い食材に含まれているからです。
また、肉には人体に欠かせない必須アミノ酸もすべて含まれています。美しく健康な体はたんぱく質だけで成り立つものではありません。炭水化物や脂質などの栄養素もバランスよくとることが大切です。
〔失敗事例4〕
「ウォーキングが日課です。これで筋肉も十分に維持できていますよね?」〔久野先生の回答〕
ウォーキングだけでは筋力の低下を防ぐことができず、結果、ダイエットの効果も半減します。残念ながらどんなにたくさん歩いてもウォーキングでは筋力の低下を防ぐことはできません。
そもそも筋肉には「速筋」と「遅筋」の2つのタイプがあり、持久力を必要とするウォーキング(有酸素運動)の効果があるのは遅筋です。一方、40代以降に年1パーセントずつ減っていく下半身の大きな筋肉の大部分は速筋です。
つまり、筋肉の減少を防ぐには速筋を鍛えることが何よりも重要で、その効果がある運動の代表格が筋力トレーニング(無酸素運動)です。
しかも筋肉は使った部分しか増えていかないので、速筋を使わないウォーキングを毎日行っても筋肉は減っていくばかり。それは基礎代謝の低下にもつながり、結果的にダイエットの効果も半減します。ご注意を。
下半身の筋力は上半身より衰えやすい
出典:Asumussen E 1980上半身と下半身の筋肉量の減少率や萎縮度を比較すると、上半身の筋力より下半身のほうが1.5倍も低下することがわかっている。
筑波大学 人間総合科学学術院 教授
久野譜也先生スポーツ医学の分野においてサルコペニア肥満、中高年の筋力トレーニング、健康政策などを研究。「科学的根拠に基づく健康づくり」で成果を上げている。 表示価格はすべて税込みです。
撮影/鍋島徳恭(人物)、藤本康介(静物)、家庭画報本誌・大見謝星斗(人物) スタイリング/大野裕美〈オフィス・ドゥーエ〉(人物)、高橋尚美(静物) ヘア/小泉貴子 メイク/熊本大祐 モデル/HANAE 取材・文/渡辺千鶴
『家庭画報』2021年7月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。