タサン志麻(タサン・しま)日本の調理師学校と同校のフランス校を卒業後、現地のミシュラン3つ星店での研修を経て都内フランス料理店で15年間働く。2015年フリーランスの「家政婦」として独立。確かな技術と柔軟な発想で作る料理が評判を呼び、「伝説の家政婦」に。フランス人の夫、2人の息子、2匹の猫と賑やかに暮らす。自分の味を見つけよう
文・タサン志麻
ラタトゥイユはフランス料理の中でも、日本人によく知られている料理なのではないでしょうか。フランス人にとっても食べたことがないという人はいないほど、定番の料理になっています。
ラタトゥイユのいいところはいろんな顔を持っているということです。一品として充分成り立つし、肉や魚の付け合わせにしたり、パスタのソースにしたり、サラダと組み合わせてドレッシングのように使うこともできます。
仕上げ方もさまざまで、トマト缶を使えばこってり、ぽったりと仕上がるし、フレッシュのトマトを使えばさらっとみずみずしい仕上がりになります。
ゴロゴロと大きめに切った野菜を使うか、小さく角切りにして使うかでも味や印象が変わってきます。
いろいろと試してみて、自分好みの味を見つけたり、気分に合わせて作り分けたりするのも楽しいものです。
フランス人とラタトゥイユの話をすれば、私はこう作る、いやこうした方がよいと延々と会話が続きます。
実はこうして自分好みの味を見つけて自分らしく仕上げるということは、レシピ通りに作ることよりも大切で、食べることや作ることの楽しさにつながります。
ラタトゥイユのおいしさを決めるポイントは野菜をじっくり炒めて旨みを凝縮することです。こうすることで野菜の甘みが出て、酸味のあるトマトとのバランスが取れるようになります。
仕上げに味をみて酸味が立つようなら砂糖などの甘みを加えてもいいのですが、砂糖の甘みは、少し重たく感じるので、甘みの強い玉ねぎの量を増やせば自然な甘さで軽い仕上がりになります。
季節が少しずれたり、買い物をするお店によってはズッキーニやパプリカが手に入らなかったりすることもありますが、そんなときは玉ねぎとなすだけで作ってもおいしくできます。
夏に限らず、一年中楽しめる料理なので、ぜひ自分好みの味を見つけて楽しんでください。
◆レシピに書けない 志麻さん流 ラタトゥイユ活用術◆
自分好みに仕上げたラタトゥイユはさまざまな料理に使ってください。
肉や魚をシンプルにソテーして付け合わせにしたり、パンにのせたり、パスタソースにするほか、オムレツの具材やドリアにしても。
ご飯とともにチキンソテーに添えると、ランチにぴったりなワンプレートに。一晩おくと味がなじんでよりおいしくなるので、ぜひ多めに作ってお楽しみください。水分をしっかり飛ばしたものは冷凍保存もできます。