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岸 惠子さん自伝を語る。「泥沼に突き落とされてもすぐに立ち上がる力のようなものがいつの間にかできていた」

2021.07.08

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キャスターを務める岸さん

威風堂々と聳える凱旋門を背に、カメラに向かって話す岸さん。1987年に開始されたNHK衛星放送の番組『ウィークエンドパリ』でキャスターを務めた。

Q8.これからについての思いをお聞かせいただけますか。


私の未来はそれほど長くはないと思っています。それだけに大切に明るいほうに目を向けて生きていきたい。私はこれまで我武者羅に無鉄砲に生きてきた。失敗もたくさんあった。

困難や、どうしようと思うほどの状態にもなった。泥沼に突き落とされてもすぐに立ち上がる力のようなものがいつの間にかできていた。その力を信じて、精一杯やりたいことをやって生きていきたい。どんなこと?といわれれば、やっぱり書いていくことだと思うの。

昭和初期生まれの私が、外国旅行が自由化していない時代に、アフリカ原野や、中東をめぐり歩いて出合った事件や、人々のことを書きたい……。でもね、正直なところ、もう3年近く会えないでいる娘一家に早く会いたいわね。親バカ、ばばバカの総大将みたいな生活を夢見ていることは確かデス。

『岸惠子自伝 卵を割らなければ、オムレツは食べられない』

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岸 惠子著 岩波書店 2200円

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12歳で体験した横浜大空襲、名監督・名優たちと映画撮影に情熱を燃やした日々、フランスの映画監督で医師だった夫イヴ・シァンピさんとの出会いと別れ、娘のデルフィーヌさんへの愛情と葛藤、過酷を極めた中東・アフリカでの取材体験。映画以上にドラマティックな人生が率直かつ艶やかな筆致で綴られた心躍る自伝。

娘のデルフィーヌさんが描いた装画

デルフィーヌさんが描いた装画の題材は母娘で旅したアフリカ。撮影/本誌・中島里小梨

岸 惠子/Keiko Kishi

岸 惠子さん

「何にでも懐疑心を持っていた」と振り返る、デビュー間もない頃。アストラカンのコートはお父さまに買ってもらったもの。

女優、作家。1932年横浜市生まれ。51年映画デビュー。『君の名は』『雪国』『おとうと』などの名作に出演。57年に結婚のため渡仏、40年以上パリに暮らす。現在は日本を拠点に、主に執筆活動に情熱を注ぐ。『ベラルーシの林檎』(日本エッセイスト・クラブ賞受賞)『風が見ていた』『わりなき恋』『愛のかたち』『孤独という道づれ』ほか著書多数。2011年にフランス政府より芸術文化勲章コマンドゥールを受勲。17年に菊池寛賞受賞。
取材・文/清水千佳子 構成/小松庸子

『家庭画報』2021年7月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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