チューリップの球根は花芽を抱いて眠りにつく
一般的なチューリップは、秋から晩秋に球根を植え付け、早咲きのタイプは3月下旬から、遅咲きのタイプは4月下旬から咲き出します。花後に土の中で球根が養分を吸収し、次の季節のために太るのはご存じだと思いますが、じつはこの時、球根の中には翌年に開花するための花芽がすでに作られているのです。
春の暖かさで開花するなら、春と変わらない気温の秋に開花することが可能なはず。しかし、球根はここで開花することのリスクをちゃんと知っています。秋に開花してしまうと、その後の冬の寒さで葉は枯れてしまい、養分を吸収して球根を太らせることができなくなります。これは種の存続にかかわる一大事! そこで、チューリップの球根は花芽を抱いたまま眠りにつくのです。
では、その休眠を打破するスイッチとは何か? それはある一定の期間、球根を寒さに当てることです。だから、本格的な冬が来る前に球根を植え付ける必要があるわけです。 ということは、球根に「よし、そろそろ冬が終わるぞ」と思わせれば、開花のメカニズムのスイッチが入るわけで、それを利用したのがアイスチューリップです。
6月頃に掘り上げた球根を3〜4か月間冷蔵庫に入れ、冬だと勘違いさせて、春と同じくらいの気温の10月くらいに外に出せば、開花のメカニズムが動き出して、寒い冬に花が咲くというわけです。 12月中旬くらいから花屋さんには切り花のチューリップが並びますが、そのチューリップの多くが冷蔵した球根を温室で開花させたアイスチューリップです。
ただし、球根の冷蔵には温度管理など特殊な方法が必要となるため、一般のガーデンやご家庭では難しく、アイスチューリップの球根として市販されているものを利用します。
アイスチューリップが楽しめるのは12月下旬~1月上旬。チューリップの周辺だけ切り取って撮影すると、まるで春の景色のよう。