8月 交趾桃香合 銘 みちとせ 茶杓 銘 東方朔/藤の裏葉
《交趾(こうち)桃香合 銘 みちとせ》(右)明時代 《茶杓 銘 東方朔(とうほうさく)/藤の裏葉》千 利休作(左)桃山時代 [筒]江月筆 [替筒]宗旦筆交趾はもともとベトナム北部を指し、そこで作られた軟質陶器のこと。銘の「みちとせ」は三千歳とも書く。本文にある西王母の桃を「三千歳の桃」といい、珍しくめでたいもののたとえとされる。茶杓は千 利休の手作りで、油竹を使い、全体を漆拭きしたもの。利休から時の関白、豊臣秀吉に贈られたと伝わることから、利休の遺作のうちもっとも優れた会心の作といわれている。
選・文=藤田 清(藤田美術館館長)中国の仙女、西王母。彼女の庭で3000年に1度とれる桃は、口にした者を不老不死にする。人々は魅了され、西遊記では庭の守護を任じられた孫悟空が食べ尽くした桃だ。
前漢時代の政治家、東方朔も魅せられた1人。その桃を3つも盗み出したのである。今年もたわわに実をつける季節がやってきた。彼の国ではお笑いの神でもある朔の高笑いを想像すると、私たちの頰も自然と緩む。
作品のエピソードトーク
動画で藤田 清館長と谷松屋戸田商店の戸田貴士氏による、本作品のエピソードトークをご覧いただけます。
撮影/小野祐次 構成/安藤菜穂子
『家庭画報』2021年8月号掲載。
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