スロバキア語の習得が選手としての飛躍の鍵に
――高校を卒業してからずっと、カヌー強豪国のスロバキアを拠点に生活されていますが、競技力の向上に言葉が重要だったそうですね。H はい。最初の1年は片言の英語で過ごしていたのですが、当時のスロバキア人コーチがあまり英語を話せなくて、自分がスロバキア語を覚えたほうが早いと思い、勉強を始めました。今では、もしスロバキア語でコミュニケーションを取れるようになっていなかったら、スロバキアに行った意味が10分の1にも満たなかっただろうと思うほど、言葉を習得することで得られた財産は大きいと感じています。
僕がスロバキア語をしゃべろうと努力し始めた時点で、わりと閉鎖的な国民性のスロバキア人との距離が一気に近くなりました。先輩の選手が積極的に声をかけてくれたり、練習に誘ってくれるようになったんです。そして、同じアドバイスも、英語で聞くのとでは言葉の力が全然違う。彼らの言語で聞けるようになって、理解が深まりました。
――25年間打ち込んできたカヌー競技の魅力を教えてください。H カヌーはプレーするフィールドが常に動いている珍しい競技です。動き続ける水をいかに味方にしてカヌーを進めるか。それがカヌーの極意であり、醍醐味であり、やっていて奥が深いと感じるところです。僕たち選手は水と戦うのではなく、「水の呼吸を読み、流れを操ること」を心がけてトレーニングしています。
――過去3度出場されている羽根田選手から見たオリンピックの魅力とは?H 歴史的な面や注目度など、すべてにおいて最高峰の憧れの舞台。なかでも自国開催のオリンピックは、選手にとって特別です。今、東京2020について何が正解かわからない状況ですが、僕はそれぞれの人がそれぞれの立場で全力を尽くすしかないと思っています。だから、僕自身は代表選手として、毎日変わらず、全力で準備を続けています。
「僕らの使命の一つは 『夢の連鎖』。未来の選手に夢をつなげたい」
――羽根田選手が考える「スポーツの力」を聞かせてください。H オリンピックにフォーカスして話すと、選手はもちろん自己実現のために出るのですが、もう一つの使命が「未来の選手に夢をつなげること」「夢の連鎖」だと思っています。僕自身、シドニーオリンピックに感動してオリンピックを目指すことを決めました。出る人だけでなく、見る人にもポジティブなエネルギーをもたらす。それがオリンピックの素晴らしさであり、ひいてはスポーツの素晴らしさであり、自分はその一端を担っているという意識でいます。