ミラン・クバン コーチに聞く
「羽根田選手の強さ、カヌーの魅力、スポーツの力」
スロバキアでの練習の合間に談笑する羽根田選手とクバンコーチ。羽根田選手のインスタグラムより。羽根田選手のコーチを務めるミラン・クバンさんは、元カヌー・スラロームのスロバキア代表選手。「カヌーは技術とフィジカルの強さの両方がものをいうスポーツ。人類の歴史の一部であり、自然とともにある競技でもあります。現在のルールはこの競技をドラマティックで魅力的なものにしていると思います」とクバンさん。
オリンピックのカヌー競技は、激流を下りながらゲートを通過してタイムと技術を競うスラロームと、流れのない直線コースで一斉にスタートして着順を競うスプリントがあり、羽根田選手とクバンさんは前者が専門です。
2人が出会った当時、クバンさんは同じカヌークラブの現役選手。初対面の印象を「控えめで礼儀正しく、大きな目標を持ったアスリートだと思いました。目標のために見知らぬ国で新しい生活を始めるという厳しい道を選ぶことは、まだ若かった彼にとって大きな決断だったはずです」と話します。
気の合う競技仲間となった両者の関係が変わったのは2009年。現役を退いたクバンさんに羽根田選手がコーチを依頼し、二人三脚の日々が始まりました。クバンさんは「タクヤのカヌー選手としての強みは、優れたバランス感覚と調整能力、急流を見極める感覚」と話します。
オリンピックに対する思いを尋ねると、熱い言葉が返ってきました。
「私はすべてのオリンピックに最高の目標と楽観主義をもって臨んできました。リオのときも、私たちはメダル獲得のために最大限の準備をして臨み、ついに銅メダルを手に入れた。あのメダルは限りなく金に近いものでした。東京2020での願いはタクヤがいいレースをしてくれること。彼は自分がすべきことをわかっています」。
選手としてコーチとして、スポーツ中心の人生を歩んできたクバンさんは「スポーツの力」をどう捉えているのでしょう。
「アスリートは厳しい練習や怪我などを乗り越えるなかで、人生における困難と闘う力を身につけ、ファンはアスリートの活躍に元気をもらう。スポーツはアスリートだけでなく、ファンのものでもあるのです」。
ミラン・クバン/Milan Kubán1976年スロバキア生まれ。13歳からカヌーを始め、17歳で同国の代表選手に。カヌー・スラロームのカナディアンペアの選手として、世界選手権で銀メダル2個、銅メダル1個を獲得。2009年に引退し、コーチに転身。 〔特集〕すべてを糧に未来を信じて 届け!スポーツの力
取材・文/清水千佳子 構成・取材・文/小松庸子 取材協力/日本カヌー連盟
『家庭画報』2021年8月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。