書・文=中村桂子(生命誌研究者)
人間だけが始めた二足歩行は、自由な手、大きな脳、言葉を話せる喉をもたらしました。そして人間は独自の文化・文明を生み出したのです。なぜ人間は二足歩行を始めたのでしょう。
森に暮らす類人猿の中であまり強くなかった人間は、気候が悪く果物の実りがよくない時に端に追いやられ、遠くまで食べ物を採りに行かなければなりませんでした。それを家族や仲間のところに持ち帰るには、立ち上がって手で運ぶしかありません。
戦いに弱く、仲間への思いやりがあったから二足歩行をし、他の動物にはない新しい世界を拓いたのだと考えると、なんだか楽しくなりますね。
『家庭画報』2021年8月号掲載。
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