ふっと力を抜いたとき、私たちはそれまで自分がいかに力み続けていたかに気づくことができます。意識的に緊張からリラックスへの転換を行い、メリハリをつけて集中力を高めましょう。
筋弛緩法を用いた瞑想
全身の筋肉を収縮させてから力を抜く緊張状態が当たり前になっていると何が緊張なのか感覚的にわかりづらいものです。そこで、一度全身に力を入れて、緊張感を高めてから力を抜いてリラックスする方法をご紹介します。
座る、立つ、寝るなどどのような姿勢でも構いません。一度大きく深呼吸をしましょう。軽く息を吸ってから、全身の筋肉を収縮させます。息を止め、手をぎゅっと握り、足の指も力いっぱいぐっと握り、腹筋にも力を入れ、両目を固くつぶり、口も力を込めて閉じましょう。力を入れるときは全力の7割か8割程度の力でよいので無理のない程度に行ってください。
全身に力を入れて緊張を高め、3秒たったらフッと力を抜く。この状態を3秒維持したら、はーっと息を吐いて全身を脱力させます。そのまま体の感覚を丁寧に観察していきましょう。両手、両足の先に血流が戻ってきて温かく感じたり、少しピリピリした感じを持つかもしれません。多少不快であっても、あるがままに受け入れます。これを2回繰り返します。
今こそ集中力を発揮したいとき、やらなければならないことが多すぎて何もかもが中途半端になりそうなとき、やる気が出ないときなどに、下の「窓の外を見るリフレッシュ瞑想」と組み合わせて行うと切り替えと集中が上手にできるようになります。
※息を止めて力むため、高血圧など循環器系の疾患をお持ちのかたは、医師に相談のうえ、行ってください。
窓の外を見るリフレッシュ瞑想
視点の移動で気持ちを切り替える私（川野）は大学時代、陸上競技の短距離の選手でした。100メートル走のスタートラインにつき緊張が極限に達したときに行っていたルーティンの一つが、いったん遠くを見て大きく深呼吸をしてから視線を近くに落とす動作でした。マインドフルネスを知るずっと前ですが、こうすると集中力が高まり、納得のスタートが切れることを経験から知っていたのかもしれません。
視点の移動を繰り返すと緊張がリラックスに切り替わり、気持ちを集中モードにスイッチすることができます。座ったままの姿勢でよいので、窓の外のなるべく遠くの景色を見ましょう。
遠くの建物やはるかかなたの山、あるいは空を見てもよいでしょう。それから、デスクの上など近くの物に視線を戻します。これを数回続けます。
太古の人は、危険な獣や獲物がいないかと遠くを見るときは戦闘状態で、交感神経が優位に働いていたと考えられます。家族や仲間と近くで寄り添って安心して過ごすときは副交感神経が優位の状態だったでしょう。
このように視点の移動は、交感神経と副交感神経の働きと関係があるといえます。
ワンポイントアドバイス
近くを見るときは癒やし系を窓がない場合は、部屋のできるだけ遠くを見るようにしましょう。近くで見るものは仕事の資料やパソコン上の書類などではなく、心が和み安心できるものがおすすめです。ふわふわしたぬいぐるみやマスコット、大事なお守りなどお気に入りの小物を一つデスクの上に置いておくとよいでしょう。
動画を見ながら「筋弛緩法瞑想」を行ってみましょう
下の動画では川野さんの筋弛緩法瞑想の詳しい説明を聞くことができます。
〔お話ししてくれたのはこの方〕川野泰周（かわの・たいしゅう）さん
臨済宗建長寺派林香寺住職、精神科・心療内科医、RESM新横浜睡眠・呼吸メディカルケアクリニック副院長。1980年生まれ。慶應義塾大学医学部医学科卒業。精神科医療に従事した後、3年半の禅修行を経て2014年より実家の横浜・林香寺の住職となる。寺務と精神科診療の傍ら、講演活動などを通してマインドフルネスの普及と発展に力を注いでいる。著書に『人生がうまくいく人の自己肯定感』（三笠書房）ほか。公式ウェブサイト https://thkawano.website/
「寺子屋ブッダ」https://www.tera-buddha.net/
