プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。
一覧はこちら>> とうもろこし飯2種
日本人でよかったと感じる瞬間のひとつに、炊き上がった白ご飯から漂う、えも言われぬ香りがあります。この香りとご飯の甘み、その無垢なおいしさは、もしかしたら外国の方にはわかりにくい世界なのかもしれません。
一方、米と別の食材を合わせ、味をつけて炊く色飯は外国の方にも人気ですね。
ご家庭でも色飯を炊かれると、今日はご馳走だねとなります。そんな色飯は味つけ飯とも言われるように、おいしく味をつけることには重点が置かれますが、香りのことをつい忘れがちになります。
「
枝豆のおいしい茹で方、ずんだ和え」でも述べましたが、食味において香り、風味は非常に重要な役割を果たしています。鼻をつまんでものを食べても味がわからないのがいい例です。
香りを生かした色飯をご紹介させていただきます。今日も野菜料理を楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「とうもろこし飯2種」は野菜料理をおいしくする7要素中5要素をクリア。
旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り 刺激
・肉や魚介類を使う料理に比べて、野菜料理は旨みが少ない。しかし、素材が持つ香りや風味に関しては勝るとも劣らない。
・枝豆をさやから出して実だけを茹でることはない。さやを除くことは香りを捨てることと同じ。とうもろこしの場合、皮やヒゲにも香りはあるが、芯には香りだけでなく甘みもある。この芯を上手に使うのがコツである。
・芯には香りや甘みのほかに、グルタミン酸、アスパラギン酸、アミノ酸が含まれる。
「とうもろこし飯2種」
【材料(2人分)】・米 1合
・昆布出汁 180cc
・塩 小さじ 1/2弱
・日本酒 大さじ1
・油揚げ 適量
・生姜(好みで) 15g
・とうもろこしの実
(塩茹で、または蒸したもの) 80g
(焼いたもの) 50g
・とうもろこしの芯(とうもろこしの実を外したもの)1本分
【作り方】1.30分以上前に米を研ぎ、ざるに上げておく。
2.昆布出汁(飯の炊き上がりの柔らかさの好みで量を加減する)に調味料を加え、好みの味にする。
3.油揚げは開いて2枚にし、みじん切りにする。切る前にきれいな油で揚げ直してもよい。香ばしさが好みなら、オーブントースターできつね色に焼いて用いる。油分だけを加えて、油揚げの存在を消したい場合は、開いた油揚げをそのまま加えて飯を炊き、炊き上がり後に油揚げを除く。
4.炊飯器に米と2の出汁、とうもろこしの芯、油揚げ、好みでみじん切りにした生姜を加えてスイッチを入れる。
5.炊き上がったら、とうもろこしの芯を取り出し、別に用意したとうもろこしの実(茹でたもの、あるいは焼いたもの)を加え、飯が潰れないようふんわりと混ぜる。
※この炊き方は、炊き上がりに芯の周りの飯が少し水っぽくなるのが難点。もうひと手間かけるなら、ご飯を炊く出汁に芯を入れて火にかけ、甘みと香りを移したら芯を捨て、その出汁に調味料を加えて炊くとよい。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。 六雁(むつかり)
榎園豊治さんプロフィール銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。
東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (昼)12時〜14時 (夜)17時30分〜23時 ※土曜日のみ17時〜
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:
http://www.mutsukari.com連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。 文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗