パプリカの昆布押し、味噌漬け
米津玄師の『パプリカ』が幅広い世代に受け入れられ、国境を超えて愛される曲となったのは、まだ記憶に新しいですね。
野菜のパプリカは、輸入が主ですが、この15~16年で日本各地でも生産されるようになり、ポピュラーな野菜となりました。日本で育てられているものは辛みがなく甘い品種で、日本料理にも大変活用しやすいものです。
歌のパプリカは子供たちにとっては楽しく、大人にとってはどこか懐かしくて温かい応援歌と評されましたが、野菜のパプリカはどうでしょう。
カラフルで甘く、苦みも少ないので、子供たちにも受け入れられやすいかもしれません。大人には昔懐かしい技法を使っておいしく召し上がっていただきたいと思います。
今日はパプリカの昆布押しと味噌漬けです。昆布押しに使う白板(しらいた)昆布は、昆布からおぼろ昆布を削った後の昆布の芯の部分ですが、大変使い勝手がよく安価で、この連載に今後も多用していきます。インターネットでも購入できますので、これを機に検索してみてください。
子供にも大人にも喜んでもらえる料理の大ヒットを目指して、今日も野菜料理を楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「パプリカの昆布押し」は野菜料理をおいしくする7要素中3要素をクリア。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み 油分 食感 香り 刺激
・魚介類を昆布押しする場合は厚みのある普通の昆布のほうがよいが、野菜に使用すると、昆布の旨みが付く前に、水分を吸い取られてしまう。また、押し過ぎると強い昆布の旨みに野菜本来の味が消されてしまう。その点、白板昆布は薄く柔らかくて野菜とのなじみがよい。
・「パプリカの味噌漬け」は野菜料理をおいしくする7要素中4要素をクリア
◎旨み ◎塩分 ◎甘み 油分 食感 ◎香り 刺激
・野菜の場合は漬け過ぎは禁物。味噌の風味をまとわせるように、野菜の持ち味との相乗効果を狙う。魚介類の場合は、大きさにもよるが数時間~1日漬けて味噌の旨みと風味をきっちり浸透させる。
「パプリカの昆布押し(左)」
【材料(2人分)】・パプリカ(赤・黄色・緑) 各1/2個
・白板昆布 適量
【作り方】1.パプリカの皮をむく。焼きなすと同じように、枝元の部分にフォークなどを刺して強火の直火であぶり、全面をまんべんなく焼く。焼き目が全面についたらしばらくおいた後、皮をむくときれいにむける。パプリカを柔らかくしたくない場合は、すぐに冷水に放して皮をむく。
大きさによるが、縦に4~6割にして種とわたを除き、先に温めておいたオーブントースターやグリルで焼いて皮部分に焼き目をつけた後、皮をむいてもよい。同様にカットして、電子レンジで加熱した後、皮をむく方法もあるが、全体に火が入り過ぎる恐れがあるので、加熱時間に注意。
2.バットに白板昆布を広げた上に、皮をむいたパプリカを並べ、上から白板昆布をかぶせる。その上に同じ大きさのバットをのせて、冷蔵庫で 12時間くらい昆布押しする。
3.そのままでもおいしいが、おろし生姜をのせ、醤油を数滴落としてもよい。ボリュームが欲しければ、上質なサラダ油やオリーブ油を1、2滴垂らす。
「パプリカの味噌漬(右)」
【材料(2人分)】・パプリカ(赤・黄色・緑) 各1/2個
・味噌漬け用の味噌 適量
「味噌漬け用味噌」・粒白味噌(西京味噌) 500g
味噌は他の味噌でも構わないが、塩分濃度により、酒やみりんの量を加減する。
・日本酒 60cc
・みりん 60cc
※野菜の味噌漬けの場合は、味噌漬け後も他の料理(味噌炒め、味噌煮など)で使用できる。
※魚介類を味噌漬けにする場合も、上の割合で合わせた味噌でよい。2~3回は使用可能だが、だんだん魚介の身から水分が出て生臭くなるため、それ以上の再利用は避ける。
【作り方】1.昆布押しと同様にパプリカを焼いて皮をむく。
2.味噌漬け用味噌の材料をすべてボウルに入れてよく混ぜる。
3.バットに2の味噌を5mm強の均等な厚みに広げ、その上に日本酒(材料外)で濡らして絞ったガーゼをきれいに広げる。ガーゼの上に1のパプリカを並べ、さらにガーゼをかぶせて広げ、2の味噌を同じように広げる。中に隙間ができないように上からラップをかけて軽く押さえる。これはプロのやり方。家庭で手軽に行う場合は、パプリカをガーゼの代わりに水切りネットの中に並べ、上下から2の味噌で挟めばよい。ネットは使い捨てにできるので手間が省ける。
4.味噌の種類、塩分にもよるが、味噌漬けした状態で12時間弱くらい冷蔵庫に保存して漬ける。そのまま食すか、軽くあぶってもよい。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。