自然に従う──それが軽井沢の正流の作法
別荘地敷地内の美しいカツラ並木。軽井沢の林の多くは、明治19年に宣教師によって“発見”されて以降、営々と植えられてきた人工林だ。写真/佐々木信一娯楽を人に求めずして自然に求めよ──
これは外国人避暑地として発展してきた軽井沢に受け継がれるスローガンです。
騒がしい文明生活を離れて、静かな森の中に、洗練された上質のコミュニティを築き、職業や地位などで分けへだてされることなく、自由平等をモットーに、質素な避暑生活を送る──この初期軽井沢避暑地の精神や美風は、今も別荘族の間では、時代を超えて、独特の「軽井沢別荘文化」として確実に継承されています。
自然を何よりも尊び、そこに溶け込む住人の生活は、決して華美なものではなく、つつましいものがよい──この抑制的な、いわば高貴なる精神こそが、軽井沢をして他の避暑地とは一線を画するところたらしめ、今に通じる憧れの源泉となっています。
祖父母から孫まで、世代を超えて愛される避暑の聖地──自然とともにあることが感じられる、本当に豊かな暮らしとは、一体何なのか。その答えを求めて名門避暑地を訪ねました。
軽井沢をこよなく愛する人々の理想の別荘ライフ
2代、3代と引き継がれている軽井沢の別荘族が異口同音にいうのが、この地の自然に親しむことの大切さと、そのためにふさわしい質素な生活。
この特集では、軽井沢をこよなく愛する人々の理想の別荘ライフを訪ねます。
深緑の中、子どもたちは元気にペダルを漕ぎ、大人はテラスでゆっくりと過ごす。坂倉竹之助さんの祖父で、軽井沢を愛した建築家・西村伊作は、9人の子に恵まれ、子や孫が世代を超え交流できる理想郷としてこの別荘を築いた。
軽井沢で実践された豊かな暮らしは現代へと受け継がれている。テラスでくつろぐのは、坂倉竹之助さんの実姉、木田三保さん(右・軽井沢ルヴァン美術館副館長)と西村家の家系の若いファミリー。
別荘地敷地内には、美しい苔の庭が見られる。塀を設けず樹木で敷地を囲うのが軽井沢別荘地の伝統の一つ。写真/佐々木信一明日7月20日配信の第2回では、坂倉竹之助さんの軽井沢別荘を詳しくご紹介します。 撮影/西山 航 取材・文/冨部志保子 スタイリング協力/山田喜美子
『家庭画報』2021年8月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。