今回、タレントのイモトアヤコさんなど、世代もさまざまな5人のメイクを担当した吉川さん。「素の唇の質感をなくさないこと、輪郭をぼかすこと。これさえ気をつければ、似合わない色はありません」。「化粧って自分に触れる、自分を愛おしむ行為。リップメイクで肌にも心にも彩りを取り戻してほしい。たとえ、マスクをしていたとしてもね」── 吉川さん成熟世代のメイクを長年手がけてきたメイクアップ アーティスト吉川康雄さんにお話を伺いました。
「人に会わない、外に行かない、そんな生活が当たり前になって早、1年半以上。ヘアカットの回数が減ったとか、リップメイクをしなくなったとか、自分にアテンションを向けなくなったという声をよく耳にします。ただ、これからもしばらくはこの生活が続くと思うと、それは世界中、誰にとっても決して短い時間じゃない。人生がもったいないんじゃないかな?」と吉川さんは語ります。
「“マスクだから”でも“マスクなのに”でもなく、誰かに見せるためやまわりに褒められるためでもなく、自分のために、自分らしく生きるために、口紅を塗りましょうと皆さんにメッセージを送りたいのです」。
唇は、顔の中で唯一「赤」の色素を持ったパーツ。
「赤という色がもたらすのは、華やかさ、明るさ、健やかさ、セクシーさ……、つまりは『生き生き感』だと思うんです。今回、5名の女性に、新しいリップメイクに挑戦してもらいました。最も大切にしたのは、それぞれの『ピュアネス』。コンプレックスやエイジングへの否定から入ると、メイクはどんどん隠す行為になり、色も質感も含めて、その人の個性が消えちゃうんですよね。
僕は、一人一人が生き生きと生きている“今”を絶好調に見せて、その人らしさを透き通らせたいと思う。結果、『私って、悪くない』と幸せな気分になってもらえたら、最高だと思っています。自分を肯定するために、今こそリップメイクを楽しんでほしい、そう思います」。
メイクアップアーティスト
吉川康雄さん東京で活動後、1995年に渡米。各国のモード誌のカバーを含むファッション撮影、広告、コレクション、セレブリティのポートレートなど幅広く活躍。2021年春、自身のメイクブランド「UNMIX(アンミックス)」がデビュー。 〔特集〕今こそリップメイクで心にも彩りを(全10回)
撮影/五十嵐隆裕〈SIGNO〉(人物) ヘア/芝田貴之〈SIGNO〉 メイク/吉川康雄 スタイリング/馬場郁雄 取材・文/松本千登世
『家庭画報』2021年8月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。