7月の野菜本膳、トマトの白和え
7月1日からスタートしたこの連載で、これまでにご紹介したレシピを中心に、7月の野菜本膳を組んでみました。写真をご覧になると、どこかのお寺の法事料理のように見えるかもしれません。本膳料理とは室町時代に成立した客をもてなす饗応料理で、日本料理の原型ともいえます。茶懐石も本膳料理の形式を取り入れています。
献立は飯:
とうもろこし飯(左前) 汁:焼きなすの赤出汁(右前)(8/11にご紹介予定) 壺椀:トマトの白和え(左奥・本日ご紹介します) 平椀:冬瓜と甘長唐辛子の餡かけ(右奥)(
7/12「冬瓜の揚げ煮」 7/7「
甘長唐辛子の油焼き」に餡をかけたもの) 中皿:夏野菜の揚げ浸し(中央・8/7にご紹介予定)にしてみました。
今、献立と言いましたが、この献立という言葉、現在は出す料理の内容や順序を表すものとして使われています。ところが、「献」とは一献というように、酒肴をすすめる意味で、本来は料理の内容ではなく、酒の肴の内容を書いたものでした。
これからも、毎月、野菜料理を膳組みしてまいります。今回の本膳には、まだ紹介していない料理も含まれますが、その中から今日はトマトの白和えのレシピを。
白和えは日本料理の定番で、野菜料理にも多く活用されますが、なかなかおいしいものに出会えません。びちゃびちゃして水っぽいもの、メリハリのないぼんやりした味のもの……、プロが作っても同様です。
理由は明らかです。豆腐の水きりが弱い、材料を衣で和えてから時間が経過している。
ぜひおいしい白和えの衣をマスターして、今後の料理に活用していただきたいと思います。今日も野菜料理を楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「トマトの白和え」は野菜料理をおいしくする7要素中5要素を取り入れている
◎旨み 塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り 刺激
・白和えに使う豆腐はしっかり絞る。和えものは衣と素材をそれぞれ準備して、和えるのは直前に。
・和える素材は同系統の味のものだけではなく、いくつかの食感、味を組み合わせる。揚げ昆布を加えることで食感と旨みをプラス。
・豆腐を茹でたり、電子レンジで加熱した後に押すと水分は抜けやすいが、豆腐特有の風味がなくなる。
「トマトの白和え」
【材料(2人分)】・トマト(できればフルーツトマト) 大きめのもの1個
・ドライトマト(なくてもよい) 適量
・白和え衣 適量
・揚げ昆布(刻み昆布がなければ、白板昆布を切ってもよい) 適量
・揚げ油 適量
白和え衣
・絞り豆腐(木綿豆腐1丁の水分をしっかりと絞ったもの) 140g
・いり白ごま(香ばしくいる) 20g
〈調味料〉
・塩 少々(1g)
・薄口醤油 小さじ1
・砂糖 小さじ2(お好みで)
【作り方】1.豆腐に重しをして水分を除く。ガーゼ(水切りネットでも)で豆腐を包み、さらに乾いた布巾で包んで水がきれるバットにのせ、その下に出た水分を受けるバットを敷く。上から重めの重しをのせ、冷蔵庫に入れ半日ほどかけて水分を除く。途中で布巾の水分を絞る。
2.水分が抜けて、豆腐のかさが最初の半分ほどに減ったらよい。
3.すり鉢にいりたての白ごま(市販のいりごまを弱火で軽くいり直したもの)を入れ、すり潰す。ペースト状にする必要はなく、少し歯ごたえが残る程度(市販のすりごまくらいの状態)でよい。そこに2の豆腐を加えてよくすり、ごまと一体化させると同時に滑らかにする。すり鉢がない場合はミキサーを使ってもよい。
4.3に調味料を加え、好みの味にする。
5.トマトは湯むきし、適宜、切る。ドライトマトがあれば2mm弱×10mmに刻んでおく。
6.刻み昆布、あるいは白板昆布を刻んだものを160℃くらいの油でカリッと揚げ、クッキングペーパーに広げて余分な油分を除いておく。
7.和えものという名ではあるが、トマトの場合はトマトと白和え衣を交互に重ねるように盛りつけ、ドライトマトを散らし、揚げ昆布をのせる。好みで白うりの塩もみや
昆布押しを具材として加えてもよい。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。