初の著書『好転力』を発売した、東京オリンピックゴルフ日本代表女子コーチの服部道子さん。“状況を好転させる力”をまとめた本書について、さらに東京オリンピックへの思いなどを伺いました。
本を書かれるきっかけは何だったのでしょうか?
(本を書かないかと)誘われたからです(笑)。でも本当に誘って頂かなかったら、自分から本を出そうとは思わなかったですし、現役を引退してすぐのタイミングだとゴルフばかりの視点になってしまったのではないか、と思います(笑)。
結婚して、子供も生まれ、現役時代とは違った葛藤のようなものもあり、それから再び(ゴルフの)仕事に戻ったことで、現役時代とは違った目線でゴルフの仕事に携わったことで新しい発見や気づきもありました。そういう意味ではいいタイミングでの出版だったのかな、と思っています。
それに加えて現在は女子ゴルフが大盛況ですよね。自分もジュニア時代からゴルフをやってきて、いろんな時代を選手として過ごしてきたことで経験したその時々の思いとか、当時の自分に言いたいこととかを、今の後輩に対して、ちょっと先を行く先輩として何か伝えられるのでは、と思うところもあり、今回の出版になりました。あと東京オリンピックのタイミングというのもあると思います。
初めての著作ということですが、どんなことを意識して書かれましたか?
とにかく読みやすくしたいと思っていました。私自身大の読者家なので、最後までに読んでもらえるような本にしたかったですね。それからゴルフをする人やゴルフ好きな人だけではなく、そうではない多くの人にも手に取ってもらえるような本にしたかったです。
実際に執筆していて難しかったのはどんなことですか?
とにかく色々と難しかったです(笑)。ゴルファーとしての自分の「当たり前」と普通の方の「当たり前」は違うと思いますし、私が面白いと思うことと皆さんが興味をもたれていることも違うと感じる部分もあって……。
ゴルフを通じての経験が、「読んでよかった」とか「よし明日から頑張ろう」という気になって頂ける本にしたかったので、分かりやすい共通点を書きたかったんですけど、なかなかその落としどころが難しかったですね。
執筆していてご自身で何か気付いたことなどありますか?
私は過去を振り返らない性格で、どちらかと言えば常に前を見たいタイプなんですね。だけど今回改めてこういう書籍を書く経験をさせてもらって、本当に多くの人に支えてもらって、いろんな経験、出会い、体験が出来たんだな、というのは改めて思いましたね。そこにはとても感謝しています。
小学4年生でゴルフを始めてからこれまで振り返る暇もなく、ずっと走ってきたようなイメージなので、一度自分の過去をこうした形で振り返って整理できたというのはこれからの将来に対してもものすごくプラスになったな、と思います。
タイトルの「好転力」はどういった想いを込めて付けられましたか?
ゴルフは「完璧」ということがほとんどないスポーツ。思い通りにいかないことばかりです。でもそこから自分の気の持ちようでどうにでもなるものだと思っています。たぶんそれは人生も同じことですよね。
先の見えない時代と言われて久しいですが、今はコロナ禍も加わってもっと不安定になっているのではないでしょうか。
ゴルフは自然と自分との戦いで、どんな状況でも自分ですべて決断しなければなりません。たとえミスをしても、そこをどうリカバリーするのか、瞬時に判断しなければなりません。状況を好転する力、それを「好転力」と呼ぶことにしました。
プレー中はキャディーさんに相談はできますが、最終的にはすべて自分ひとりで決めなければなりません。好転力を呼び込めるのはあくまで自分自身。失敗も決して悪いことではなくて、いかにそこから立ち上がるか、そこで学んだことをいかに今後に生かすか、ということが問われるのがゴルフというスポーツです。
そうしたプレーを通じて学んだことをまとめましたので、読者の方とは立場も仕事も違うとは思いますが、少しでもお役に立ったりエールになったらいいなぁと思っています。
強いて言うなら、どういう人に読んでもらいたいというのはありますか?
どういう人というのはないのですが、この本で書いている「心持ち」の部分はどの仕事でも共通すると思うんです。ですのでこれから何かを頑張っていこうという人や、いま何をやってもうまくいかないと思っている人など幅広い人に読んでもらえたらな、と思っています。