16歳(1984年)、全米女子アマ選手権にて優勝したときの服部道子さん。先ほど女子ゴルフ界が盛況というお話もありましたが、若い頃から活躍された(16歳で史上初の全米女子アマ優勝など)服部さんは現在の女子ゴルフ界をどうご覧になっていますか?
正直大変だなぁ(笑)というのは感じます。というのも今はSNSなどの普及で皆が一喜一憂しやすい世の中ですよね。(SNSなどのおかげで)全部が見えるというのはプラスにもなるし、見えすぎるのが辛くなる時もあると思うんです。
ただ、時代は違うのですが、心の持ちようで、どうにでも状況を好転できるというのは今も昔も変わらないのではないかと思っています。
執筆期間はコロナ禍でしたが、それが内容に影響しましたか?
そうですね。東日本大震災の時もそうでしたが、こうした事態になると、より一層自分自身と向き合ったりしますよね。自分にやれることは限られてしまうのですが、そんな状況でも自分の目とか気持ちを肥やしていくというのは、こういう時期だからこそできるのかな、とも思います。
そうでないと日常はとかく仕事に追われて過ごしてしまいがちです。これまで自分自身と向き合う時間も少なかったと思いますし、そうした自分自身と向き合った時間をこれからの土台にしていきたいな、と思います。
2020年はスポーツ競技が思うようにできなかった一年でした。改めて服部さんから見てスポーツの持つ役割ってなんだと思いますか?
やっぱりなんだかんだ言っても「パワー」がもらえる存在だと思います。試合までどれだけ苦労というか努力できたか、というのはその舞台に立った者にしかわかりませんし、そうした者同士が繰り広げる本気の勝負や、そこから生まれる感動というのは「作られたモノ」では難しいのではないかな、と思っています。
紆余曲折あったオリンピックも開催されそうですが、服部さんはゴルフ日本代表女子コーチとしても参加されます。どんなオリンピックにしたいですか?
(※このインタビューは、2021年6月15日に行われたものです)
そうですね、ここまで賛否両論がある中で開催するわけですから、皆が「前を向く」きっかけになるオリンピックにしたいですね。
「やってよかった」「力をもらった」って思ってもらいたいですし、「日本でやれてよかった」と振り返ってもらえるよう私も微力ながら頑張りたいなと思っています。もう次はいつ日本で開催できるかわかりませんし、今もう「やるしかない」って感じです。
ゴルフ日本代表ヘッドコーチ丸山茂樹さんと。本書には56のエピソードが書かれていますが、あえて1つ選ぶとしたら、ご自分の中で最も印象に残っているものは何ですか?
アメリカの大学に留学していた頃の話をまとめたエピソード32の「やっぱり最後はハートとハート」ですかね。パット・ワイスさんという方とのエピソードです。
どうしてそのエピソードを選んだのですか?
やっぱり「心と心」というのは一番大切な部分かな、と思います。言語が上手にできていない人でも行動や態度だけでもつながっていけると思うし、やっぱり最後は人と人の心のつながり、目には見えないですが、そこが一番の要となって人を動かしていくのだな、ということに気付いたエピソードでしたので。
服部さんがアメリカの大学に留学された頃と、SNSが発達した現在では、人と人の関係性も少し変わっていますよね。先ほどもお話されていましたがSNSでアスリートが非難されたり応援されたりとコミュニケーションの形が違う現在において、何が大事だと思われますか?
うーーーん、繰り返しになりますが、やはり自分自身の心の持ち方ですかね。自分の中になにかブレない部分があれば多少は受け流せると思うんです。もちろん体調が悪くてはダメですが。
逆にそういうものがなく、自分自身を俯瞰する余裕がないと、そういうものに流され、余計にもっと傷ついてしまうのではないでしょうか。自分のことだけど、どこか俯瞰して見られる感じというか、そういう心の持ち方がこれからは大切なのかな、と思いますね。
この「好転力」には、そのヒントになるようなことが書かれているのですね?
はい、そんなこともいくつか入れたつもりです。いくつ参考になるかはわかりませんが(笑)
服部道子(はっとり みちこ)
愛知県生まれ。小学4年生のときに祖父の勧めでゴルフを始める。1984年に日本女子アマチュアゴルフ選手権を当時史上最年少の15歳9ヶ月で優勝。翌年にはUSGA(全米ゴルフ協会)の主催する全米女子アマチュアゴルフ選手権を当時史上最年少で優勝し、120年以上続くUSGAの歴史でUSGAのタイトルを獲得した初の日本人となる。高校卒業後はアメリカ・テキサス大へ進学。NCAAリーグで10勝しオールアメリカンファーストチームに4度選出。文武両道の学生に贈られる「マリリン・スミス賞」等を受賞した。91年に国際経営学部を卒業後に帰国しプロ転向。98年に年間5勝を挙げて賞金女王に輝き、国内外ともに活躍した。国内メジャー3勝を含む通算18勝。現在は一児の母として奮闘する傍ら、2020東京オリンピック ゴルフ日本代表女子コーチを務める。ゴルフトーナメントの解説や講演、執筆活動など幅広く活躍中。本書が初の著作となる。
服部道子著『好転力』(世界文化社刊)