プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。
一覧はこちら>> とうもろこしと白うりの白和え、焼きとうもろこしアイス
ある匂いを嗅いだとき、急に幼かった頃の思い出など、昔の記憶が甦ることってありますね。匂いに結びついた記憶は他の記憶より長く残るのだそうです。
私の夏祭りの思い出は、子供のときも親になってからも、屋台のとうもろこしを焼く匂いに結びついているようです。買って食べてみるとあんまり……で、毎回後悔するのですが、買わずにはいられない(笑)。あの醤油が焦げた香りは人を魅了します。
今日はそんな焼きとうもろこしを使った料理を2品ご紹介します。「
とうもろこし飯2種」でもお話ししましたが、とうもろこしはその実だけでなく、芯もヒゲも使えます。
また実のほうは、甘さ、香り、食感、色と生かせる要素を多く持っているので、料理を考える際はその取捨選択で悩みます。今日の料理は欲張って全要素を生かします。
香りを生かした料理が愛する人の思い出に結びつき、記憶として残ることを期待しつつ、今日も野菜料理を楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「とうもろこしと白うりの白和え」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素をクリア。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り 刺激
・上手に茹でて薄塩をすることでとうもろこしの食感と甘みが出てくる。白和えではあるが、あくまでもとうもろこしが主役であり、薄い塩加減ではととうもろこしが生きてこない。
・揚げたヒゲを添えることで油分と風味をプラス。
・「とうもろこしアイス」は、野菜料理をおいしくする7要素中 6要素をクリア。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り 刺激
・油分には苦みやえぐみを感じにくくする働きがあるが、多過ぎると香りも感じにくくなる。アイスクリームには油脂が多く含まれるため、焼とうもろこしにして香りを強調する。
・醤油焼きにすることで、甘みを引き立てるとともに醤油の風味が追加される。
「とうもろこしと白うりの白和え」
【材料 (2~3人分)】・とうもろこし(茹でて塩をふったもの) 25g
・白うり昆布押し 15g(「
白うりの昆布押し」)
・白和え衣 70g(「
トマトの白和え」)
・揚げ油 適量
【作り方】1.とうもろこしは茹でて、冷めたら実を外して薄く塩をする(蒸しても、電子レンジで加熱してもよい)。塩が少なすぎると甘みが出ず、衣で和えたとき、主役のとうもろこしが衣に負けてしまう。
2.とうもろこしのヒゲの青い部分を160℃くらいの油で色よく揚げ、クッキングペーパーに広げて余分な油を除く。
3.適宜切った白うり昆布押し(白うりの塩もみでもよい)と1のとうもろこしを白和えの衣で和える。
4.器に盛り付ける。和えものは衣が材料をまとめる接着剤のような働きをする。1人分をひとかたまりにして器に盛ると、口に運ぶ際、箸で一口分を取ろうとしても大きなかたまりなので、うまく取れない。そこで、一口大にまとめたものをいくつか重ねるように器に盛ると食べやすくなる。仕上げに2のヒゲをのせる。
「焼とうもろこしアイス」
【材料 (2~3人分)】・市販のバニラアイス 100g
・とうもろこし(茹でて塩をふったもの) 30g
・トッピング用の焼きとうもろこし(醤油または砂糖醤油焼き) 適量
・ポップコーン(お好みで) 適量
【作り方】1.市販のアイスクリームは少し柔らかくしておく。
2.茹でて薄く塩をしたとうもろこしと、トッピング用の焼きとうもろこしをそれぞれ用意する。
3.1に2の茹でたとうもろこしを加えて混ぜ、冷凍庫に入れて程よい堅さに急冷する。とうもろこしの糖度はアイスクリームに比べるとかなり低いので、甘いアイスクリームに仕上げたい場合は砂糖(材料外)を足す。
4.3が程よい堅さになったら、スプーン2本を使ってアイスを成形して器に盛り、上に焼きとうもろこしをトッピングし、お好みでポップコーンを添える。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。 六雁(むつかり)
榎園豊治さんプロフィール銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。
東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (昼)12時〜14時 (夜)17時30分〜23時 ※土曜日のみ17時〜
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:
http://www.mutsukari.com連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。 文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗