歯周病は心臓病や糖尿病などの病気と関連
成人が歯を失う主な原因は、歯周病、虫歯、歯の破折です(下の表参照)。
歯周病は歯周病菌の毒素による炎症です。食後、歯の表面に食品をエサに増殖した歯周病菌が黄白色のプラーク(歯垢)を作り、そこで毒素を出すと歯肉炎が起こります。
歯肉炎が進むと歯と歯肉の間にすき間(歯周ポケット)ができ、プラークがついて、さらに炎症が広がります。そうして歯を支える歯槽骨が溶け、やがて歯が揺れて、抜けてしまうことも多いのです。
歯周病は感染症のほか、心臓病、糖尿病とも関連し、認知症ともかかわると考えられています。上の歯の歯周病が鼻の奥の副鼻腔に及び、副鼻腔炎になることもあります。
「歯周病を治療したうえで、やむなく抜歯をしたら心内膜炎が治った患者さん、血糖状態を表すHbA1cが下がった患者さんもいます。先述のような慢性の病気と診断された場合、一度は歯科で診察を受けていただきたいですね」(俵木先生)
頻度が高い歯の病気やケガ
●歯周病
歯周病菌がプラーク(歯垢)を作り、毒素を出して、まず歯肉に炎症を起こす(歯肉炎)。その後、歯周ポケットができて、炎症が歯を支える歯槽骨に及ぶと、歯根膜が壊れ、歯槽骨が吸収されていく。初期には自覚症状はなく、進行するとブラッシング時の出血、歯の揺れ、口臭などが出てくる。歯肉の退縮によって歯が伸びたように見える。
●虫歯
プラーク内の虫歯菌が飲食物の糖分を栄養にして酸を出し、この酸が歯の表面を溶かしていく。嚙み合わせの面(咬合面)の凹み、歯と歯の間が虫歯の好発部位。歯周病などで歯肉が退縮して露出した象牙質も虫歯になりやすい。虫歯が歯髄に達すると痛みが出たり、飲食物がしみたりする。
●歯や歯根の破折
硬い食品を嚙んだときだけでなく、ストレスなどで長時間嚙みしめていたときなどに、歯が欠けたり、割れたりすることがある(破折)。歯の表面だけの破折は気がつかないこともあるが、破折が歯根の部分にまで至ると強い痛みが出る。いずれにしても嚙み合わせが変わるため、受診が必要。
虫歯や破折も歯を損失する原因
虫歯は虫歯菌(ミュータンス菌)の感染症で、ほとんどの人が幼少期に親など周囲の人から感染します。
虫歯で溶けた部分や虫歯治療後の補綴物(ほてつぶつ)がはずれた部分を長年放置し、舌でいつも触っているとその刺激で舌が傷つき、舌がんにつながることもあります。
歯が折れたり欠けたりする破折は硬い食べ物、ストレスなどで強く嚙み合わせたときなどに起こります。
破折が歯根まで及ぶと強い痛みが出ます。軽い破折でも嚙み合わせが変わるため、歯科の診察を受けるほうが無難です。