食いしばりや歯ぎしりで嚙み合わせが変化
歯を失わないまでも、咀嚼や食いしばり・歯ぎしりや食習慣などによって歯は年齢とともに変化していきます。
臼歯には上下で嚙み合わせるための山と谷の部分があります。この山の部分が硬い食べ物やストレスなどで食いしばる習慣によって、だんだんすり減っていくのです。このすり減りは前歯でも起こります。
すり減りは咀嚼の機能の低下を招きます。また、食いしばりや歯ぎしりは歯周病や破折を起こす原因にもなります。
なお、食いしばりや歯ぎしりが強いと歯槽骨やあごの骨に大きな力がかかり、それに対抗するように骨が増殖して外に出てくる例もあります(骨隆起)。
加齢や歯周病、食いしばりなどによって起こる変化
●歯の表面の磨耗や歯肉の退縮
【A】食いしばり、歯ぎしりなどによって、歯の表面の山が削られて、平らになる。飲食物の酸で溶け、象牙質が表出して斑点状になることもある。
【B】歯周病や強すぎるブラッシングで歯肉が下がり、象牙質が表面に出る。象牙質は軟らかく、虫歯になりやすい。
【C】歯周病で歯肉と歯の間にポケットができ、細菌の塊であるプラーク(歯垢)が溜まる。プラークはやがて石灰化して歯石となる。歯石がつくとさらに歯周病が進行する。
●骨隆起
【D】食いしばりや歯ぎしりが習慣化し、歯を支える骨が嚙む力に対抗して成長し、出っ張ってくる(骨隆起)。イラストのように下あごの歯槽骨が隆起するほか、上あごの骨が隆起することもある。自然に消失することはほぼない。病気ではないが、義歯を入れるときに支障が出ることがあり、その場合は手術で骨を削る。
歯の健康度を決める主な要因
●遺伝的要因歯の質、歯並びなど
●物理的要因嚙み合わせ、食いしばり、硬い食べ物など
●化学的要因唾液の質、食べ物や飲み物の酸など
●生物学的要因口腔内の細菌叢など
●ふだんのオーラルケアや治療ブラッシング、歯列矯正、歯科の定期健診など
●病気やケガ(ケアが困難、唾液の分泌の低下)認知症、片まひ、膠原病など
〔解説してくださった方〕俵木 勉(たわらぎ・つとむ)先生いづみや歯科 院長、明海大学 臨床教授、日本顎咬合学会 副理事長。1957年生まれ。1982年に城西歯科大学を卒業、1986年同大学大学院を修了、歯科博士号取得。1989年、埼玉県狭山市に、いづみや歯科を開業。2016年から明海大学歯学部臨床教授。専門はインプラント歯科。歯科衛生士と連携し、予防歯科に注力するほか、高齢者施設などでの歯科治療や嚙むトレーニングにも携わる。 取材・文/小島あゆみ イラスト/にれいさちこ
『家庭画報』2021年8月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。