withコロナ時代の健康術 第8回(03) withコロナの新しい生活様式で生きなければならないこの時代に、50代以降から衰えやすくなる器官や機能を取り上げ、健康を保つための方法を紹介します。今回は「歯の健康」をテーマに俵木 勉先生にお話を伺いました。
前回の記事はこちら>> 〔解説してくださるかた〕いづみや歯科 院長、明海大学 臨床教授、日本顎咬合学会 副理事長
俵木 勉(たわらぎ・つとむ)先生
●前回の記事
成人が歯を失う主な原因3つ。人生100年時代に多くの歯を残すには>>自分に合う方法で積極的にオーラルケアを
近年、「オーラルフレイル」が注目されています。
嚙めない食品が増えてきた、食べるときにこぼす、むせる、滑舌が悪くなってきた、唾液の分泌量が減るといった現象で、「健康な状態と要介護の状態の中間に当たる虚弱」を指す「フレイル」が口腔内にも起こるのです。
早期に積極的なオーラルケアや歯科受診をすることで健康な状態に戻れます。気になる症状は歯科医や内科医に相談することが大切です。
ブラッシングに集中できる環境が大事
洗面所が暑い、寒い、狭いといった状態では無意識に急いで歯磨きを終えてしまいがちになる。特に重要な就寝前のオーラルケアは「冷暖房が効いていて、ケアに集中できる場所に座り、ゆっくり丁寧に行ってほしいですね」と俵木先生。入浴時にオーラルケアをする際には保温やのぼせに気をつけたい。オーラルケアの一番の基本は、歯のブラッシングです。
「食べかすが歯や歯肉に悪さをするのは1日放っておいたときです。食べたらすぐ磨くほうがいいとか、食後30分間は唾液が出ているので磨かないほうがいいとか諸説ありますが、あまり神経質にならず、日中は口をゆすいだり、飲み物を飲んだりし、夜寝る前に丁寧にブラッシングすればいいでしょう。そのためにも落ち着ける場所でブラッシングに集中してほしいですね」。
歯ブラシは軟らかめのものを。歯冠と歯肉との境目で象牙質が露出している場合、歯ブラシによって削れてしまったり、知覚過敏になったりする可能性があります。
歯磨き粉はつけなくてもかまいません。「特に発泡剤や清涼剤が入っている歯磨き粉は使用時の気持ちよさから“ブラッシングしたつもり”になってしまいがちです」。
歯のすき間や凹みのケアも入念に。歯間ブラシ、デンタルフロス、ワンタフトブラシといった細かい部分のケア専用の道具を使いましょう。
サイズや軟らかさなどが多様なので、使用方法とともに選び方も歯科衛生士に指導してもらうほうが無難です。
自分に合うオーラルケア用品を選ぶ
歯と歯の間の汚れは歯間ブラシ、デンタルフロスでケアを。ワンタフトブラシは歯冠と歯肉の間、歯と歯の間の凹み、頬の肉が当たる臼歯の周囲など、普通の歯ブラシが届きにくい部分のブラッシングに向く。舌につく白い舌苔が気になる人は舌ブラシで夜にやさしく落としてもよい。いずれも歯科で歯科衛生士にサイズや硬さの選び方や使い方について指導を受けてから使い始めるのが安心。食べかすや舌の細胞が白く舌に残る舌苔は通常はそれほど気にする必要はありません。舌を磨きすぎるとかえって舌が傷ついてしまうので注意が必要です。
ただ、舌が下がっている人や口呼吸をしている人は舌苔がつきやすい傾向があります。「もし舌苔を取るのなら、夜寝る前にやさしくこするくらいで」と俵木先生。ちなみに俵木先生は舌磨きはしないとのことです。
きちんとブラッシングができているかどうかも歯科でチェックしてもらうといいでしょう。なお、日本歯科医師会のYouTubeチャンネルでオーラルケアの方法を紹介しています。