飲食物の酸や舌の位置をチェックしてみよう
歯のエナメル質はpH5.5程度の酸性で溶け始めるとされています。
商品によって異なりますが、黒酢、コーラ、スポーツドリンク、柑橘類やそのジュースなどは酸性が強く、常飲している人は注意が必要です。
「飲むときに口の中でくちゅくちゅと液体を回す習慣があったために歯全体が溶けていき、補綴物だけが目立つようになった例もあります」。これらの食品を摂ったら、口の中全体をゆすぎましょう。
ふだんの舌の位置を意識してみることも重要です。鼻で呼吸しているときには舌の先は上あごについているのが普通です(前歯にはくっつかない)。
舌の先が下の前歯やそのつけ根にある場合には、口呼吸をしている可能性があります。口呼吸は口腔内の乾燥を招き、感染リスクを高めます。
副鼻腔炎や花粉症などによる鼻づまりがあるなら、その治療が必要です。また、知らず知らずに舌で前歯を押し、前歯が前に移動するケースもあります。
このように舌が下がるのは舌の筋肉が衰えている証拠。舌の筋肉の衰えは誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)の引き金になります。
「舌を口蓋に当てて数秒キープする舌の筋肉を鍛えるトレーニングが有効で、当院でも歯科衛生士が指導しています」。
口呼吸や舌の沈下が習慣になっていませんか
●上あごの前歯の手前が舌の正しいポジション
口を閉じて鼻で呼吸をしているとき、舌は前歯の少し前で、上あごの口蓋に軽く自然に当たっている。●口呼吸しているときには舌が下がっている
鼻づまり、舌の筋力の低下などが口呼吸や舌の沈下を引き起こし、口腔内の乾燥や誤嚥性肺炎を招く。食事や会話をしている以外の時間、舌の位置がどこにあるかを確認してみよう。鼻で自然に呼吸しているとき、舌は上あごの前歯の少し前に位置しているはず。
しかし、舌の筋肉が衰えてくると舌が下の前歯に当たったり、それよりも下に沈んでいたりする。この舌の沈下は、将来、誤嚥性肺炎の原因になる可能性がある。
また、鼻づまりなどで口呼吸しているときにも舌が下がっている。口呼吸をしていると口腔内が乾燥しやすく、風邪などに感染しやすくなると考えられている。
舌が下がっている人は舌先を上あごにつけて力を入れる訓練をしてみよう。
〔解説してくださった方〕俵木 勉(たわらぎ・つとむ)先生いづみや歯科 院長、明海大学 臨床教授、日本顎咬合学会 副理事長。1957年生まれ。1982年に城西歯科大学を卒業、1986年同大学大学院を修了、歯科博士号取得。1989年、埼玉県狭山市に、いづみや歯科を開業。2016年から明海大学歯学部臨床教授。専門はインプラント歯科。歯科衛生士と連携し、予防歯科に注力するほか、高齢者施設などでの歯科治療や嚙むトレーニングにも携わる。 取材・文/小島あゆみ イラスト/にれいさちこ
『家庭画報』2021年8月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。