そして現在の小さな悩みは、20代半ばのお嬢さんと「アクセサリーの好みが合わないこと(笑)。私の持っているお気に入りのピアスを使ってほしいから、娘にもピアスの穴を開けてもらったほどなのですが、微妙にセンスが違うみたいで。でも年を重ねていくと、また変わっていくかしら、とそれも楽しみなんですけれど」。
アクセサリーやファッションの好みは違っても、娘さんとは一緒にライブや食べ歩きに行くほどの仲良し。「息子とも“最近読んだ中でこの本が面白かった”、“じゃあ同じテーマのこの漫画はどう?”なんてすすめてくれることもよくあります。本を共有したり、今どきの音楽を教えてもらったり。
何かと口実を設けて、大好きなホテルニューオータニやディズニーランドに家族そろって出かけるのも、とにかく楽しいから」。
司書でもあり、読書クラブも主宰するほどの本好き、活字好き。「最近のナンバーワンは中山七里さんの『護られなかった者たちへ』。あらゆる意味でショックを受けた一冊でした」。親から子へ伝えていくのはモノだけではありません。共に過ごした時間の、その瞬間に感じたときめきや高揚感、記憶に染みついた一場面。ふとした時に思い出すその一こまが、その先の日々に力や指針を与えてくれることは、毛木さんご自身が一番よくご存じです。
凛とした母の姿が、常に心の片隅に
毛木さんが愛してやまない、お母さまから譲り受けたアクセサリー(左・中・中右の3点)と婚約指輪・結婚指輪(右2点)。海外でのお仕事が多かったお父さまからお母さまへのお土産は、いつもジュエリーだったそうです。「母は常にちゃんとした人でした。父の仕事関係の方がいつ自宅に来ても恥ずかしくないよう、家の中もきちんとして。もちろんお洋服もお化粧もととのえて。それがどれだけ大変かなんて、当時はわかりませんよね。私が小学生のときは毎年、年始で忙しかったであろうに、剣道の連日の寒げいこに明け方から付き添ってくれました。暗い冬の朝に、車を運転するその凛とした姿は今も目に焼きついています」。
50歳を過ぎた今となっても、“そんな母に恥をかかせるわけにはいかない”という気持ちは常にどこかにあり、日々の行動の指針やブレーキとなるとおっしゃる毛木さん。
「どんなに忙しくても、朝食は家族と一緒にとった父。のんびり育った私が就職するときには、いろいろと心配をして、とても細かいアドバイスを送ってくれました。気性の異なる三姉妹を公平に育てるのは、並々ならぬ苦労があったんだな、というのは自分が子育てをして初めてわかったこと。いつか天国で両親に会えたなら、“よくがんばったね”と褒めてもらいたい……、ずっと心の中ではそう思っていることに最近気がつきました」。
ご両親から毛木さんへ、そしてお子さんたちへ。愛と笑顔に満ちた家族の物語は、これからも優しく紡がれていくことでしょう。
撮影/大見謝星斗 取材・文/露木朋子 ヘアメイク/長谷川廣紀 花/ジャルダンノスタルジック