ブラウス/ブラン ナチュール(ベラ)プロたちのこだわりが築き上げてきた傑作
質問にはご自身で事前に準備をして丁寧に答えてくださる沢口さん。落ち着いて話す姿には、現在の榊 マリコのイメージが重なる。今回マリコが直面する史上最難関の事件とはいかなるものなのか?
「これまでにない難しい事件というのは、犯人の手口が最も巧妙だったということです。普通の人なら見逃してしまうようなことをマリコは最後の最後までこだわり続けます。だからこそ0.01パーセントの謎の成分という、ほんのわずかな手がかりに気づく。諦めずに手を尽くしたことで犯人へと辿り着くことができたんです。
撮影に関しては、初日から監督がスクリーンを意識した映像を撮ろうとなさっていると意図が伝わってきました。例えばマリコの登場シーンでは、ビルの屋上でクレーン車を使って夕日を入れ込んだ1カット長回しのぶっつけ本番の撮影だったんです。さらに、ワイヤーアクションでは生まれて初めて4メートルも吊られて、震えるような体験をしました。足が地につかないのは不安なものですね。恐怖心を忘れるため一生懸命に役の気持ちを考えるようにしていました」
『科捜研の女』が映画化されると聞いて夢のような話だと思いました──沢口靖子さん
今回の劇場版に過去の登場人物が再び登場することや科捜研ならではのリアルな科学捜査も見どころだ。
「マリコの元夫役である渡辺いっけいさんをはじめ、かつてのレギュラーのかたが登場することでストーリーに化学変化を起こしクライマックスへの展開につながっていきます。小野武彦さんが演じる父親の榊 伊知郎とのシーンは台本を読んだときにいちばん胸に迫ってきた場面です。“親子である前に科学者同士”というせりふが沁みました。
映画のなかではある細菌の繁殖を確かめるシーンが出てきますが『科捜研の女』ではリアルに描く鑑定シーンも見どころの一つです。よく“ご自分でできるほど詳しくなったんじゃないですか”なんて聞かれることがあるのですが、とんでもないです。事前にきっちりと下調べをしてくださる専門のシリーズ助監督さんがいらして毎回丁寧に俳優に指導してくれるんですよ」
理系女子には憧れの要素がたっぷり入っている作品だが、科学にはそれほど興味はなかったと語る沢口さん。科学でなければ、何に夢中になるのだろうか。
「お掃除や家の片付け、“断捨離”には夢中になります。またお買い物に行くのも楽しいですね。特にお洋服やステーショナリーグッズが好きで、時間を忘れてしまうひとときです」
沢口靖子/さわぐち・やすこ
1965年、大阪府出身。1984年『刑事物語 潮騒の詩』でデビュー。1985年NHK連続テレビ小説『澪つくし』のヒロイン役で人気を博し、以降、ドラマ、映画、舞台など幅広く活躍。代表作には『科捜研の女』、『鉄道捜査官』(テレビ朝日系)、『警視庁機動捜査隊216』(TBS系)、『検事・霞夕子』(フジテレビ系)がある。舞台作品には2000年の帝国劇場『細雪』や2015年の明治座『台所太平記』など。
『科捜研の女-劇場版-』
©2021「科捜研の女 -劇場版-」製作委員会1999年に放送を開始したテレビ朝日系人気ドラマ『科捜研の女』の初の劇場版。世界同時多発した科学者の不審転落死事件の捜査を進めるうちに、世界的な研究で注目を集めている天才科学者へと辿り着くが、彼には完璧なアリバイがある。
京都府警科学捜査研究所、通称、科捜研で数々の事件を解決してきた榊 マリコをはじめとするスペシャリストたちが捜査一課の土門刑事とともにシリーズ史上最難関のこの事件に挑む。
出演者は沢口靖子、内藤剛志、若村麻由美、風間トオルといったテレビ版のメンバーに、天才科学者役の佐々木蔵之介が加わる。
日本映画
監督/兼﨑涼介
脚本/櫻井武晴
音楽/川井憲次
公式URL/
https://kasouken-movie.com/2021年9月3日より全国公開 撮影/岡積千可 構成・文/山下シオン ヘア&メイク/黒田啓蔵〈Iris〉 スタイリング/竹上奈実
『家庭画報』2021年9月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。