僕は稽古には時間をかけて積んでいきたいタイプですが、これから先は一つの作品にかける時間が短くなっていくので、短時間でどれだけ全力を尽くして舞台に持っていけるかという修業の始まりだと思っています。
実際に今回、市川染五郞さんと踊らせていただく『三社祭』は2か月しか稽古の時間がありません。さらに「四の切」の義経役で出演させていただく(市川)弘太郎さんの自主公演と稽古期間が重なっています。
小学1年生の頃から三味線を教わっている稀音家祐介先生には、大人になってスケジュールが過密になって脳が衰えていくときに、どれだけ効率よく覚えていいパフォーマンスをするかという方法を教えていただいてきました。
それを活用すべく、振りをいかに早く覚えて、踊り込む段階に入れるかが大事だということを、今直面している状況で身に染みて感じています。
『傾城反魂香』の狩野雅楽之助。2020年12月、歌舞伎座。© 松竹『三社祭』で僕が目指しているのは善玉と悪玉が左右対称と思えるほど揃っていること。役者さんの個性が色となって出る『三社祭』もありますが、まずはきっちりと揃うように、染五郞さんと一緒に合わせていきたいと思っています。
祖父(2代目市川猿翁)がよく「型知らずして型破れず」とおっしゃるとおり、芸の境地への近道なんてありませんから、まずは『三社祭』の基本をしっかりと学び、一つ一つ自分のできることから努力をしていきたいと思います。
市川團子(いちかわ・だんこ)
2004年、東京都出身。父は9代目市川中車、祖父は2代目市川猿翁。2012年6月、新橋演舞場でスーパー歌舞伎『ヤマトタケル』のワカタケル役で5代目市川團子を名乗り、初舞台。2013年10月、国立劇場『春興鏡獅子』の胡蝶の精で、国立劇場賞特別賞を受賞。今回の『三社祭』には、これまで『春興鏡獅子』や八月納涼歌舞伎の『東海道中膝栗毛』で共演を重ねてきた市川染五郞さんとともに初役で挑む。
今月の歌舞伎
【歌舞伎座】
八月花形歌舞伎
~2021年8月28日
●第一部 11時開演三代猿之助四十八撰の内『加賀見山再岩藤』
●第二部 14時30分開演一、『真景累ヶ淵 豊志賀の死』 二、『仇ゆめ』
●第三部 18時開演一、『源平布引滝 義賢最期』
二、『伊達競曲輪鞘當』『三社祭』
※市川團子さんは第三部の『三社祭』に善玉役で出演。
1等席1万5000円ほか
チケットホン松竹:0570(000)489
公演の詳細は歌舞伎公式総合サイトをご参照ください。
歌舞伎美人
https://www.kabuki-bito.jp 表示価格はすべて税込みです。
構成・文/山下シオン 撮影/岡積千可 ヘア&メイク/森 智聖(VRAI Inc.)
『家庭画報』2021年9月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。