本当の心を、自分の声で
コロナ禍で公演ができなかった時期、聴衆への想いを新たにしたという演奏家は多い。
千住真理子さんも「久々の舞台でお客さまとの距離を近く感じ、みなさんが本当に聴きたい音楽は何か改めて考えた」という。そこで制作したのが、世界の名曲によるアルバムだ。
「大曲もいいけれど、短い中に懐かしさがある名曲を弾くと、みなさん涙して大切に聴いてくださるんです」
デビュー45周年の昨年は、バッハとイザイの無伴奏ソナタという難しい大曲に挑んだが、これは「ヴァイオリニストとして生きる自分との約束」を果たすことだった。
そうして磨いた技術で奏でる無伴奏の終曲「アメイジング・グレイス」は、細部まで美しい。「蛍の光」の編曲は、兄の千住 明さん。
「リハーサルで兄から、年老いたあと、今は亡き大親友を思い出し涙するイメージで、ゆっくり弾いてといわれました。私も100歳まで生きられた頃に実感できるのかしらと思いながら、時間をかけて気持ちをつくりました」
幅広い活動の中、常に忘れずにいるのは「自分の声で弾く」こと。
「たとえそれがしゃがれ声でも、つくろうことはしたくない。一期一会で私の音楽に耳を傾けてくださるかたには、本当の心を聴いてほしいです」
千住真理子(せんじゅ・まりこ)ヴァイオリニスト。12歳でデビュー、慶應義塾大学卒業後、指揮者ジュゼッペ・シノーポリに認められ、国内外で活躍。使用楽器は、2002年に運命的な出会いを果たしたストラディヴァリウス「デュランティ」。
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[CD]
千住真理子『蛍の光〜ピースフル・メロディ』
UCCY-1110 3300円 ユニバーサル音楽で巡る世界の旅をコンセプトに、スコットランド民謡「蛍の光」、アイルランド民謡「ダニー・ボーイ」、スペイン・カタロニア民謡「鳥の歌」など17曲を収録。人類がみんなでコロナ禍に立ち向かわねばならない今、世界各地の曲をまんべんなく収録したかったという。
[コンサート]
千住真理子 ヴァイオリン・リサイタル
●北海道 札幌コンサートホール Kitara2021年9月4日(土)
4000円
●富山 アイザック小杉文化ホール ラポール2021年9月12日(日)
3500円
●神奈川 ミューザ川崎 シンフォニーホール2021年9月15日(水)
4800円
●埼玉 プラザウエスト さくらホール2021年9月25日(土)
3500円
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構成・文/高坂はる香
『家庭画報』2021年9月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。