プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。
一覧はこちら>> 赤ピーマンのジュース じゅん菜を添えて
千葉にある農園で他の夏野菜とともに、ピーマンも育てておりました。盛りの頃は緑一色だったピーマンが次第にポツポツと赤くなり、そのままにしておくと、すべての実が真っ赤になります。緑が多い畑の中で見事なコントラストを見せ、目を奪われたものです。
今回はそんな赤ピーマンを使った料理をご紹介します。赤ピーマンは緑のピーマンが完熟したもので、緑ピーマンが開花後2~3週間で収穫するのに対し、赤ピーマンは7~8週間で収穫します。成熟すると、苦みが減り甘みが増してフルーティになり、ビタミンCもアップします。
なお、パプリカとは別物で、パプリカが肉厚で生食できるのに対し、赤ピーマンは肉薄で小ぶりで生食には向きません。また、日持ちしないため、そのほとんどが国産です。
農園で赤ピーマンを大量に収穫した際に、最高の状態の赤ピーマンをふんだんに使ってお出ししているのが今日の料理です。パプリカにはない赤ピーマンだけの風味と甘みが生きていて、舌だけでなく、体も喜ぶおいしさです。今回はつるんとしたじゅん菜と合わせましたが、なくても結構です。
一年中ある緑ピーマンと違い、赤ピーマンはまさに旬の食材です。真っ赤に熟したピーマンを店頭で見かけられた際にはぜひお試しください。今日も野菜料理を楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「赤ピーマンのジュース じゅん菜を添えて」は、野菜料理をおいしくする7要素中5要素をクリア。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み 油分 ◎食感 ◎香り 刺激
・塩は後から加えるのではなく、最初から加えてピーマンの甘みを引き出す。
・酸味は酢だけでなく、柑橘酢も合わせると奥行きが出て、味の輪郭がはっきりする。
・オリーブ油を数滴垂らし油分をたして味のボリュームを出してもよい。
「赤ピーマンのジュース じゅん菜を添えて」
【材料(8~10人分)】・赤ピーマン 10個
・水 1L
・塩 小さじ7分目
・オレンジジュース(果汁100%) 400cc
・赤ワイン 30cc
・シェリービネガー(ワインビネガーなど他の酢でもよい。酸味により量を加減) 10cc
・はちみつ(お好みで) 少々
・レモン汁(お好みで) 少々
・じゅん菜 110g
【作り方】1.赤ピーマンは縦に2つに切って種とわたを除き、ゆでやすい大きさに切っておく。大きめのボウルに氷水をあらかじめ用意しておく。
2.鍋に水と塩を入れ火にかけ、赤ピーマンを加え、沸いたら火から下ろす。
3.氷水入りのボウルより一回り小さいボウルに2を移し、氷水の上に浮かべ、回転させて急冷する。
4.冷えたらミキサーにかけて滑らかなペースト状にする。
5.4にオレンジジュース、赤ワイン、シェリービネガーを加え混ぜ、味をみる。酸味がたりなければお好みでレモン汁を少々加える。甘みがたりない場合はお好みではちみつを少量。また、微量のオリーブオイル(材料外)を加えてもよい。
6.じゅん菜はさっとゆでて冷水に放し、冷めたら水から上げて水分をきっておく。
7.5を器に注ぎ、じゅん菜を浮かべる。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。 六雁(むつかり)
榎園豊治さんプロフィール銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。
東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (昼)12時~14時 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:
http://www.mutsukari.com連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。 文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗