老いや病を見せていただいたから命の大切さがわかる
介護の日々を優しい表情で振り返るヘレンさん。「生老病死を近くで見させていただきました。次は私が“見ていただく”番です」── 西川さん
ご自宅では、仏壇に手を合わせ、写真の3人に語りかける日常が繰り返されています。75歳になったヘレンさんは今、介護の日々をどう振り返るでしょうか。
「義父母と母は、だんだん老いて病気になって死んでいく自分の姿、つまり“人が生きるということ”をこんなに近くで、私たち家族に見せ続けてくれました。これはかけがえのない贈り物です。人間はいつまでも元気ではいられないし命には必ず終わりが来る──。悲しいけれど避けられない真実を親たちが身をもって見せてくれたおかげで、私たちは今、命の大切さを身に染みて感じることができます。......そして、今度は私がそれを“見ていただく”番ですね」
多重介護の喜怒哀楽をありのままに綴った著書。ご著書や講演で自らの体験を積極的に発信し続けるのも、ご自身の生き方を多くの人に見ていただき、命の大切さを伝える活動の一環なのでしょう。
老いても病んでもご両親たちとつながっていた心は、亡くなってもつながり続け、さらに次の世代へとつながっていきます。
最後に「ご自身に言葉かけを」とお願いすると、「ヘレンさん、ようやらはったね! 後悔は一つもありません」と胸を張っておっしゃいました。
撮影/鍋島徳恭、大道雪代 取材・文/浅原須美 構成・取材・文/小松庸子
『家庭画報』2021年9月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。