原作の『西郷(せご)どん!』。女性作家の目を通した群像劇がいきいきと描かれる。
26歳で、薩摩藩主・島津斉彬(渡辺 謙)に抜擢され、江戸に出立。お庭番となった西郷は、紆余曲折の経験を積みながら「努力し、次第に、大人としての交渉術を身につけて」いく。
「一人で乗り込んでいくものの、相手の立場を考え、理解して、話し合って判断を下す。そういう心意気や行動力が、やがて江戸城の無血開城につながっていくんです。知れば知るほど、素晴らしくて、西郷のその人間力というのか、そこに深い魅力を感じますね。結局のところ、どんな時代にあっても、相手の事情とか、気持ちなどを察して動けることの大切さは変わらなくて、これは、現代社会のビジネスの場面でも同じだろうと思うんです」まさに「男が男に惚れるというのは、こういうことですね」と目を輝かせる。
「脚本家の中園ミホさんの書かれるセリフがまた素晴らしいんです。強烈に心にせまってくる言葉が多々ありまして。主従関係を書くにしても、どこか男女の恋愛のような、男性には書けない濃い人間関係があって、それが薩摩の風土とマッチしている」
ドラマではこれまであまり知られていなかった、西郷の恋心や、3回したという結婚も描かれる。「最初は須賀という女性、二度目は島流しになった奄美大島で。三度目はそれから六年後、江戸に戻ってからです。なかでも須賀さんについての記録は残っていなくて、ほとんど夫婦という生活がなく別れているということはわかっているんですが、そこをどう描いていくのか僕自身も楽しみでいます。
それから、斉彬の長女である篤姫(北川景子)との何ともいえぬ関係性です。力になりながら、恋といえるような、いえないような……。北川さんのお芝居がまた、お転婆かつ、チャーミングなので」
8月から西郷の生地、鹿児島で始まった撮影では、地元の人々の温かさに、猛烈な元気をもらって過ごしたという。「島津家別邸の、美しい仙巌園で御前相撲をさせてもらったのも、格別な経験でした。庭園の一部は世界文化遺産になっているんですよ!」
そう、いかにもうれしそうに話すのは、世界遺産検定1級の資格を持つという、鈴木さんならではの感想だろう。当時の暮らしぶりを肌で知るために行った、“草履づくり”にも感動したそうだ。「西郷が実際に履いていた“足なか”という、藁の草履で、ドラマでも履いています。指と、かかとがはみ出る草履で、今、つき指と闘っていまして(笑)。一足編むのにこんなに時間がかかるんだとか、当時の生活を実感できる貴重な体験でした」