今のままではだめだという気持ちが生まれて
鹿児島県、知覧町にて。3番目の妻・糸役の黒木華、大久保利通役の瑛太、赤山靱負役の沢村一樹と。
今や、注目の人となった鈴木亮平さん。俳優として着実に階段を上ってきたが、デビューに至るまでは決して順風満帆だったわけではないという。
「大学時代に芝居をする面白さにはまって、俳優をめざしたんですけど、どうやってデビューしたらいいのかわからない。あの時期はすごくつらかったですね。まずは芸能事務所に入らなくてはと、自分のプロフィールを作って、何十社かに飛び込み営業をしました。とにかく動いてしまう、そういうところも西郷に似ていて重なりますね(笑)。嫌われたこともたくさんありますが、あきらめたくはなかった」
そう話す様子に、真っすぐで純粋な気性がうかがえる。そしてどこか朴訥としたところも彼の魅力だ。「遅咲きだといわれますが、デビューしてからはどんな役であっても、演ずる場をいただけたので、全然、苦ではなかったです」
役柄に合わせ、体重を増減させることでも知られる。「プロフェッショナルとして、努力するのは当たり前のことです」と、ブレることがない。
「ただ、30代に入ってからは、今のままで満足していてはだめだという気持ちが生まれてきました。演ずる人間として、もっともっと充実させていきたい、熱さや勢いも失ってはならないと。そんなときに、1年を通して一つの役ができるという、めったにない機会をいただいた。幸運な現場に立たせてもらっていると思っています」
ドラマのリーダーであることのプレッシャーは?と尋ねると、「ないです」と笑う。「変にクールに装ったり、できるやつと思われたくてカッコつけると苦しくなるでしょう。自分のだめなところを、初めからどんどん見せてしまおうと」
初顔合わせのとき、渡辺 謙さんからかけられた言葉が、今も忘れられないという。「『おまえは、とにかく前に向かって突き進んでいけ。突っ走って、転んでもいい。それを俺らが全力でサポートするから、とにかく突っ走っていけ!』と。大先輩の俳優としても、人としても、凄く大きいかた。これぞ自分がめざすべき道だと思いました。出会えたことの幸せを感じています」
脚本の、心に残った言葉の数々を「ノートに書き留めているんです」とも話す。「最終回が終わったら見返して、あのとき、西郷やまわりの人たちはこういう気持ちで、こう動いたんだとか、人生の学びになるのではと思うんです」
秘めた野心は大きいらしく、「これから先、まだまだやりたい役、やりたいことがたくさんあります。世界に出ていく夢もその一つです」と、穏やかな中にも強い意思を感じさせる口調でいう。「いつになるのかはわかりません。でも、今やっているこのドラマは、俳優としても、自分自身にとっても、これからの大切な財産になる。一年間、懸命に全うします」
鈴木亮平/Ryohei Suzuki
俳優
1983年、兵庫県出身。東京外国語大学卒業。
2006年に俳優デビューし、2014年『花子とアン』(NHK)で注目される。
大河ファンタジー『精霊の守り人最終章』(NHK)が放送予定。
大河ドラマ『西郷(せご)どん 』
原作:林 真理子「西郷どん!」(KADOKAWA)
脚本:中園ミホ
出演:鈴木亮平、瑛太、黒木 華ほか
日曜/NHK総合20時~20時45分 BSプレミアム18時~18時45分
2018年1月7日スタート(全50回予定)
撮影/増田 慶 取材・文/水田静子 ヘア&メイク/宮田靖士〈THYMON Inc.〉
スタイリング/臼井 崇〈THYMON Inc.〉
「家庭画報」2018年1月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。