蓮いもの白酢かけ、きゅうり緑酢和え
先日の赤ずいき(「
赤ずいきの酢炒り、唐辛子炒り」)に続いて、今日は同じずいきの仲間の蓮いも(別名・青ずいき)を取り上げます。蓮いもは、いもは使用せず葉柄(ようへい)部分だけを使います。葉柄を切ると、その断面にれんこんのように多くの穴が開いているため、蓮いもという名前がついたとか。高知県では沖縄県から伝来したということで「りゅうきゅう」の名で親しまれています。
蓮いもは他のずいきほどあくが強くないため、スライスして水にさらしサラダなどに使われる場合もあります。
私は青ずいきではなく、蓮いもという呼び方が好きなのですが、ずいきの名の由来は夢窓疎石(むそうそせき。鎌倉時代末から室町時代にかけて活躍した臨済宗の僧)の「いもの葉に置く白露のたまらぬはこれや随喜の涙なるらん」によるという説や、皮をむいていもの髄(ずい。中心)を食すため髄茎(ずいくき)、その略ともいわれます。
ちなみに白ずいきには「白だつ」という呼び名もあります。これは葉を広げて立っている白ずいきの様子が、田んぼに一本足で立つ白い鶴の姿に似ているとして付けた「田鶴(たづる)」という雅名からのようです。そして、白い田鶴が略されて白だつ。
日本人は食材の名前一つにも、見立てなどの遊び心を発揮します。粋で風流な日本の野菜料理を今日も楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「蓮いもの白酢かけ」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素をクリア。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り 刺激
・青ずいき(蓮いも)は酢を入れた湯で茹でたり、酢炒りするとせっかくの緑色が失われる。夏にぴったりの美しい翡翠色を生かす料理法にする。
・素材自体の味が淡泊な蓮いもに、白酢をかけることで旨みと酸味を外からのせ、白こんにゃくとナッツの食感と油分でおいしさのグレードを上げる。
・「蓮いものきゅうり緑酢和え」は、野菜料理をおいしくする7要素中5要素をクリア。
旨み ◎塩分 ◎甘み 油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・緑酢は古くからある料理法で、色の鮮やかさや爽やかな味というのがウリだが、食生活が豊かになった現代においては、古いままの緑酢では美味にはつながらない。きゅうりと相性のよい果物を加え、生姜を忍ばせることで、現代人の味覚に合う緑酢に昇華。
・味に深みが欲しければくせのない油を数滴加える。
「蓮いもの白酢かけ」
【材料(3人分)】・蓮いも 1~1.5本
・白こんにゃく(5mm×5mm×3.4cm) 12本
・漬け出汁 360cc強
出汁360cc、塩0.6g、薄口醤油24cc、日本酒10cc
・カシューナッツ 適量
・かぼすの絞り汁 少々
・白酢 大さじ2
白酢(作りやすい分量)絞り豆腐(木綿豆腐1丁の水分をしっかりと絞ったもの) 140g
いり白ごま(市販のいりごまを軽くいり直す) 10g
塩 少々
薄口醤油 小さじ1と1/2
砂糖 小さじ3強(好みで)
出汁 大さじ1
酢 大さじ1
※白酢の作り方は白和えの衣に出汁と酢を追加したものと考えればよい。
「
トマトの白和え」参照
【作り方】1.蓮いもは何層かに巻いている茎をはがす。その後、皮を包丁の刃と親指でつまむようにして引っぱりながらむいていく。「
赤ずいきの酢炒り、唐辛子炒り」参照
2.1を1cm×1cm×3.5cmくらいに切り、水に放す。
3.鍋に湯を沸かし、塩を加えて蓮いもを入れる。蓮いもが浮かんでくるので落とし蓋などで押さえながら1分半ほど茹でて冷水に放す。
4.水から引き上げて水分を絞り、用意した漬け出汁の半分量につけて下味をつける。
5.白こんにゃくは5mm×5mm×3.5cmくらいの大きさに切って下茹でし、水に放してざるに上げる。その後、残った漬け出汁で炊いて下味をつける。茹でたままでもよい。
6.4の蓮いもの水分をきって軽く絞り、5のこんにゃくと合わせて器に盛る。上から白酢をかけて刻んだカシューナッツを散らし、最後にかぼすの絞り汁を2滴ほど垂らす。
「蓮いものきゅうり緑酢和え」
【材料(3人分)】・蓮いも 1~1.2本
・漬け出汁 180cc強
出汁180cc、塩0.3g、薄口醤油12cc、日本酒5cc
・きゅうり 1.5本
・土佐酢 15~20cc
出汁4:薄口醤油1:みりん1:酢1の割合
・生姜(みじん切り) 小さじ2
・デラウェア(皮をむいて) 15粒
・梨(6mm角のあられ切り) 15切れ
・ざくろの実 18粒
【作り方】1.蓮いもの皮のむき方、茹で方は「蓮いもの白酢かけ」と同様。寸法は1cm×1cm×2.5cmにする。
2.茹でて水に放した蓮いもを水から引き上げて水分を絞り、漬け出汁につけて下味をつける。
3.きゅうりはおろし金ですりおろしてクッキングペーパーに包んで軽く水分を絞る。
4.3に土佐酢と生姜を合わせる。
5.蓮いもの水分をきって軽く絞り、デラウェア、梨と合わせ、4の緑酢で和える。
6.器に盛り、ざくろの実を散らす。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。