プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。
一覧はこちら>> 8月の野菜本膳、きゅうりとしいたけの合い混ぜ
7月に続き、この連載でこれまでにご紹介したレシピを中心に8月の野菜本膳を組んでみました。
今回は夏らしく切子の金縁義山(きんぶちぎやまん)の器に盛りました。ギヤマンはポルトガル語でダイヤモンドを意味する“diamante"(ジアマント)が語源と言われます。この手の器では大正時代に日本から特注したバカラ社の茶懐石の皆具が有名です。残念ながら、今回の器はそれではありませんが(笑)。
献立は飯:
蓮飯 汁:
フルーツトマトの赤だし 四方鉢:きゅうりとしいたけの合い混ぜ(本日ご紹介します) 長皿:
刺し身こんにゃくとフルーツ酢味噌 丸皿:
賀茂なすの揚げ煮と
甘長唐辛子の揚げびたしになります。
今日は本膳の献立にも入れましたきゅうりとしいたけの合い混ぜをご紹介します。この料理には水でもどした塩くらげを刻んで酢につけたものと、干ししいたけを炊いたものを入れるのが定番ですが、野菜料理ということで塩クラゲは除きました。代わりにみょうがのせん切りで香りをつけています。干ししいたけを炊くのが面倒なときは、生しいたけを焼いて刻んだものでも構いません。他にもこれまで紹介してきました焼きなすや蓮いも、酢蓮などを加えてもおいしいです。
合い混ぜとは合わせて混ぜること。合わさることで、それぞれの力の和を上回る効果が得られる。野菜同士のシナジーこそ、野菜料理のコツの一つなのです。今日も野菜料理を楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「きゅうりとしいたけの合い混ぜ」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素をクリア。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り 刺激
・和えもののコツは、材料をすべて用意しておき、人数分だけ食べる直前に和えること。
・塩もみしたきゅうりを土佐酢で下洗いしておくことで、ごま酢クリームの量を減らし、全体の味を穏やかにすることができる。
・干ししいたけの甘露煮は少し甘めに炊いておく。和えもの全体は甘さ控えめに、椎茸がアクセントとなるように。
・干ししいたけは砂糖を少量加えた水に浸して、冷蔵庫で最低1時間以上時間をかけてもどす。50℃以上の湯で急にもどすと熱によって変性が起き、旨み成分であるグアニル酸ができにくくなる。
「きゅうりとしいたけの合い混ぜ」
【材料(3人分)】・きゅうり 3本
・甘露しいたけ 1個 ※作り方は下記参照
・みょうが 1個
・土佐酢 180cc
出汁4:薄口醤油1:みりん1:酢1の割合
・ごま酢クリーム 適量
白ごまペースト(市販品)50g、酢大さじ3、砂糖大さじ3弱
「
酢蓮の和えもの4種」参照
【作り方】1.きゅうりは小口切りにし塩もみして、土佐酢で下洗いした後、軽く水気を絞る。「
きゅうり塩もみの酢のもの」参照
2.せん切りしたみょうがと刻んだ甘露しいたけを合わせて混ぜ、好みの量のごま酢クリームで和える。
甘露しいたけ
【材料(作りやすい分量)】・干ししいたけ(中) 6枚
・水 約1L
・昆布 5g
・濃口醤油 小さじ1と1/2
・みりん 小さじ1
・砂糖 小さじ1/2
・サラダ油 少々
【作り方】1.干ししいたけは砂糖(分量外)を少量加えた水500ccに浸して冷蔵庫で最低1時間以上もどす。
2.しいたけがもどったら、もどし汁を分ける。もどし汁は砂などが混じっている恐れがあるので、一度クッキングペーパーでこす。しいたけは石づきの部分は切り取り、傘と軸に切り分ける。
3.鍋にもどし汁全部としいたけ(傘・軸)、昆布を加えて火にかける。沸いたら弱火にしてゆっくり90分くらいかけて柔らかく炊きもどす。途中で煮汁が少なくなったら残りの水を随時たす。軸は旨みがあるので最初は一緒に炊き、食べないのであれば、傘の部分が柔らかくなり軸の旨みが溶け出したら取り除く。
4.しいたけが柔らかくなり、煮汁が減ってきたら、昆布を除き調味料を加えて中火で煮る。
5.煮汁が煮つまり少なくなったらサラダ油をごく少量加えて、煮汁をしいたけに絡め、煮つまったら完成。
※最後にしっかり煮つめることで、干ししいたけの旨みが溶け出した煮汁を、再びしいたけに含ませる。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。 六雁(むつかり)
榎園豊治さんプロフィール銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。
東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (昼)12時~14時 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:
http://www.mutsukari.com連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。 文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗