茶豆の塩茹で、紫ずきん3種
この連載を始めて、はや2か月、皆さまのおかげで今日まで続けることができました。感謝申し上げます。
初回は「
枝豆のおいしい茹で方」でしたが、その中に予告で書きました茶豆のおいしいものが、今、店頭に出ています。茶豆はさやに茶色いうぶ毛が生えているのが特徴で、中でもだだちゃ豆(山形県鶴岡市白山産)は甘みが強く、風味も豊かです。
茶豆の他にも黒豆の枝豆も出ています。おせち料理に使う黒豆を完熟前に収穫したものです。また、丹波黒大豆を枝豆専用に品種改良した「紫ずきん」は薄皮が薄紫で形が頭巾に似ていることから命名され、粒が大きく甘みがあります。
今日は、この2種類の枝豆を使った料理をご紹介します。もちろん、塩茹でが一番おすすめですが、そろそろ枝豆も飽きたという方もいらっしゃるでしょうから、趣向を変えて料理します。
それから、先日、「小いもの衣被ぎ」で芋名月の話をしましたが、実は豆名月(または栗名月)という九月十三夜の月(後の月)の別名もあります。十五夜とは別で、十三夜の月に豆や栗を供えました。そして十五夜と十三夜のどちらか一方の月しか見ないことを片見月といい、縁起が悪いとされていました。
忙しい現代人は両方の月見はできないかもしれませんが、小いもと枝豆の両方を食べることだったらできますね。月に代わって野菜料理を楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「茶豆の塩茹で」は、野菜料理をおいしくする7要素中5要素をクリア。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み 油分 ◎食感 ◎香り 刺激
・さやの両端を切る時間がない場合は塩分濃度を4%弱にすればよい。また、茹で汁の塩分濃度を少し控えて、ざるに上げた枝豆に塩を薄くふってもよい。舌に直接塩が当たるので、おいしさはそのままで結果的に減塩が可能となる。
・最終的に枝豆の実が吸収する塩分が豆の重量の1%になるよう調整するイメージ。それが甘みが引き立つ塩分濃度である。茹でたてをさやのまま口に運ぶと、香りがよく、茹で汁で引き出された枝豆の甘みが最高である。
・「焼き紫ずきん」は、野菜料理をおいしくする7要素中5要素をクリア。
◎旨み ◎塩分 ◎甘味 油分 ◎食感 ◎香り 刺激
・紫ずきんを塩茹でで楽しんだ後、残ったものをさやごと焼くことで香ばしさが加わり、温めることで風味も甦る。
・「紫ずきんの醤油煮」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素をクリア。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・塩茹でに飽きたら赤唐辛子を入れて醤油煮にして、さやに含まれる出汁とともに枝豆を味わう。ほのかな辛みと油分が旨みを増加する。
・「紫ずきんの青山椒煮」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素をクリア。
◎旨み ◎塩分 ◎甘味 油分◎食感 ◎香り ◎刺激
・青山椒を加えて炊くことで風味が弱い紫ずきんに爽やかな刺激が加わる。
「茶豆の塩茹で(右下)」
作り方は「
枝豆のおいしい茹で方、ずんだ和え」参照
「焼き紫ずきん(左上)」
【材料(2~3人分)】・塩茹でした紫ずきん 150g
茹で方は「
枝豆のおいしい茹で方、ずんだ和え」参照
【作り方】1.塩茹でした紫ずきんを、あらかじめ温めておいたオーブントースターやグリルに入れ、さやにきつね色の焦げ目がつくくらい焼き、熱いうちに供する。
「紫ずきんの醤油煮(右奥)」
【材料(2~3人分)】・紫ずきん(両端を切っておく) 150g
・出汁 300cc
かつお節と昆布の出汁でも、ベジタリアン用は昆布出汁でもよい
・濃口醤油 大さじ2
・みりん 大さじ1+小さじ1
・日本酒 小さじ1
・赤唐辛子(種を抜く) 1本
・サラダ油 少々
【作り方】1.紫ずきんは出汁を含みやすいようにさやの両端を切っておく。
2.鍋に出汁を入れて火にかける。赤唐辛子と調味料を加え、紫ずきんも加える。
3.沸いたら弱火にし、あくが浮いてきたらすくい取り、5分ほど炊く。
4.火が通ったら、サラダ油を数滴入れ全体に絡め、そのまま冷まして味を含ませる。
※さやごと口に運び、枝豆を食べるように出汁とともに紫ずきんを味わう。
「紫ずきんの青山椒煮(左下)」
【材料(2~3人分)】・紫ずきん(両端を切っておく) 150g
・出汁 300cc
かつお節と昆布の出汁でも、ベジタリアン用は昆布出汁でもよい
・濃口醤油 大さじ2
・みりん 大さじ1と小さじ1
・日本酒 小さじ1
・青山椒 5g
※青山椒は柑橘系の香りと辛みを持っており、大変重宝する。しかし、5月の一時期にしか出回らないため、まとめて買い求め、下処理をして冷凍保存しておく(「ひと目でわかるプロセス&テクニック」参照)。青山椒がない場合は瓶詰めで市販されている有馬山椒で代用可能。
【作り方】1.紫ずきんは出汁を含みやすいようにさやの両端を切っておく。
2.鍋に出汁を入れて火にかける。青山椒と調味料を加え、紫ずきんも加える。
3.沸いたら弱火にし、あくが浮いてきたらすくい取り、5分ほど炊く。
4.火が通ったら、そのまま冷まして味を含ませる。
※さやごと口に運び、枝豆を食べるように出汁とともに紫ずきんを味わう。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。