野菜のにぎり寿司
どうだと言わんばかりの料理で恐縮です。秋になる前に夏の野菜料理の集大成と復習を兼ねて、野菜のにぎり寿司を信楽焼のまな板皿に豪快に盛りつけてみました。
こんなお寿司がホームパーティで出てきたら称賛の嵐ですね。家庭でお寿司用に生の魚を少量ずつ買うことは難しいですし、そんなことするくらいなら寿司屋から出前をとった方が正解でしょう。でも、それをホームパーティに出しても費用対効果は……。
だったら、この連載で紹介してきた野菜料理を使って野菜寿司にしませんか。本日、ご紹介するネタの一部だけでもいいのです。上手ににぎれなくても、100均でもにぎり寿司が簡単にできる型が売っていますし、手まり寿司にしてもいいですね。みんなで作るのも楽しいでしょう。
江戸前寿司では寿司酢に砂糖を入れないところも多いのですが、野菜寿司の場合は砂糖を加えることをおすすめします。市販の寿司酢でもいいのですが、自分で作れば経済的ですし、何より甘さの調整も自由自在。
ただし、寿司酢を合わせる際に注意点があります。砂糖を溶かすために、火にかけるというレシピをよく見かけますが、あれはやめてください。家中に酢の臭いが充満し、必ず後悔します。材料を合わせてラップをし、一晩おけば翌日にはきれいに溶けています。
どんな高級寿司屋にもない。だからこそ家庭でやる価値がある野菜寿司、ぜひ自家薬籠中のものにしてください。今日も野菜料理を楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「野菜のにぎり寿司」は、全部で野菜料理をおいしくする7要素中7要素をクリア。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・鮮魚の寿司は当日仕込みが原則だが、野菜寿司は前日から仕込みができる。作り置きのものも使用できる。段取りよい仕込みで気軽に楽しむ。
・寿司飯は寿司酢の量を通常より減らして薄めの味にするとネタの野菜と調和する。
・野菜寿司はそのほとんどが醤油やわさびをつけないので、ネタである野菜の味を少しだけ強くする。
「野菜のにぎり寿司」
寿司飯【材料 (作りやすい分量)】・米 2合
・寿司酢 70~80cc(好みで加減する)
米酢450cc 砂糖180g 塩70g 昆布8g
(材料をすべてボウルに入れてラップし、そのまま一晩おく。翌日、昆布を取り出して泡立て器で混ぜて溶かす。瓶やペットボトルで常温保存できる)
【作り方】1.米は炊く30分以上前に研いで、ざるに上げておく。
2.1の米を通常の水加減より1割少ない水で炊く。
3.飯切り(はんきり・寿司飯を合わせる木製の桶)の内側としゃもじを水で十分に湿らせ、布巾で拭いておく。飯切りがない場合は大きめのボウルでよい。
4.ご飯が炊き上がったら、飯切りまたはボウルに移して寿司酢を全体にかけ、しゃもじを横に使って切るように酢を合わせていく。うちわがあれば、扇ぎながらやるとよい。酢が全体になじんだら、周りについた米粒も合わせて、寿司飯を片側に寄せる。水で洗い堅く絞った布巾を寿司飯にかぶせ、ご飯が寄せてあるほうを上にして飯切りまたはボウルを傾け、余分な酢が流れるようにする。
寿司ねた・焼きしいたけ(醤油焼き)
しいたけは軸を外してオーブントースターで焼き、仕上がりに醤油を薄く塗る。
・焼きしいたけ おろしポン酢のせ
しいたけは軸を外して軽く塩をふり、オーブントースターで焼く。市販のポン酢に大根おろしを絞ったものと刻みねぎを加えてしいたけの上にのせる。
・貝割れ大根辛子味噌漬け いりごま
貝割れ大根の葉の部分を外し、茎の部分のみを味噌漬け用の味噌に辛子を多めに加えたものに1~2時間漬ける。仕上げにいりごまをふる。「
パプリカの昆布押し、味噌漬け」参照
・みょうが甘酢漬け
「
賀茂なすの揚げ煮とみょうがの切り方、甘酢漬け」参照
・かぶ薄切り昆布押し 揚げ昆布
かぶは厚さ3mmほどにスライスして軽く塩をふった後、白板昆布で挟んで4~5時間昆布押しする。仕上げに揚げ昆布をのせる。
・パプリカ(橙)南蛮漬
「
パプリカの南蛮漬け」参照
・パプリカ(黄)昆布押し
「
パプリカの昆布押し、味噌漬け」参照
・パプリカ(赤)味噌漬け
「
パプリカの昆布押し、味噌漬け」参照
・れんこん甘酢漬け
「
新れんこんの酢蓮2種」参照
・れんこん梅酢漬
甘酢3:梅酢1の割合で合わせた酢に漬ける。「
新れんこんの酢蓮2種」参照
・オクラ塩茹で 梅肉
オクラの下処理と茹で方は「
オクラ梅若煮麺」参照。仕上げに梅肉をのせる。
・水なすぬか漬け 辛子
「
夏野菜のぬか漬け」参照。仕上げに辛子をのせる。
・松茸佃煮
「
松茸の佃煮、吸いもの」参照
・ズッキーニ(緑)揚げびたし
「
夏野菜の揚げびたし、南蛮漬け」参照
・ズッキーニ(黄色)南蛮漬け
「
夏野菜の揚げびたし、南蛮漬け」参照
・焼きとうもろこし
とうもろこしを焼いて火が通ったら、醤油を塗って再度焼く。冷めたら、芯に沿って実の根元に包丁を入れ、バラバラにならないように実を切り落とす。
・白うり昆布押し
「
白うりの昆布押し」参照
・長いもわさび漬け
「
長いものわさび漬け、梅焼き」参照
・甘長唐辛子油焼き
「
甘長唐辛子の油焼き、おろし和え」参照
・なす唐辛子煮(9月15日紹介予定)
・蓮いも ごま酢クリーム
「
蓮いもの白酢かけ、きゅうり緑酢和え」参照
※用意した寿司飯を一口大ににぎり、寿司ねたをのせて落ちないように、再度にぎる。
※手まり寿司にする場合は、寿司飯一口大の分量を力を入れずに丸め、寿司ねたと合わせてラップで包み軽く絞って丸い形を作る。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。