運命を変えるパワーストーンの力 第4回(全7回) 人生の勝敗を分かつ、人知を超えた見えざる作用を“運(ラック)”と呼び、古代より人は、幸運をたぐり寄せるために「石の力」を信じ、利用してきました。今も、洋の東西を問わず成功者がひそかに信奉するパワーストーンとその生かし方を考えます。
前回の記事はこちら>> 「石の力」は、世界の共通言語(コモンセンス)だ!
占星術研究家の鏡リュウジさんと女優のとよた真帆さんに、歴史や実体験に基づく「石の力」について教えていただきました。
メズム東京、オートグラフ コレクションにて。歴史の中で移り変わる、石の役割と機能
鏡リュウジさん(以下、鏡) 人と石とのつながりの歴史は、有史以前、人類誕生の黎明期にまでさかのぼります。石器に始まり、時代ごとにその機能が変わっていきました。僕が監訳した鉱物学者ジョージ・フレデリック・クンツの著書『宝石と鉱物の文化誌』には、世界中から集めた石にまつわる伝説や迷信などが紹介されていて、その変遷が辿れるので興味深いものがあります。
“そもそも、アクセサリーは護符や魔除けと同じ。「石の力」の歴史は有史以前にさかのぼる”鏡リュウジさん(翻訳家・占星術研究家)占星術、魔法、タロット占いや神話のフィールドで活躍。翻訳家の顔も持ち、ジョージ・フレデリック・クンツの『宝石と鉱物の文化誌』(原書房)の訳書で、パワーストーン思想のルーツを日本に紹介した功績は大きい。とよた真帆さん(以下、とよた) 昔、エジプト文明に夢中になったことがあるのですが、ピラミッドや石の神殿などの遺跡を見ると、古代文明が栄えたところには必ず巨石文化がありますよね。ラピスラズリやマラカイトを染色や化粧、装飾に使用していたという史実からも、当時、石は人類と切り離せない関係だったことがわかります。
“石は偶然が生んだ美しい芸術作品。地球の一部を持っているような感覚です”とよた真帆さん(女優・探石女子)多数のドラマや映画、舞台で活躍。有名な石マニアで、写真右の石と国内外を旅し、撮影を続ける。写真や絵画の個展を開いたり、京友禅の絵師としてきもののデザインを行うなど芸術の造詣も深い。DIYの著書もある。衣装・ブラウス7万9200円/アルビーノ テオドロ(三喜商事) スカート9万200円/エス マックスマーラ(マックスマーラ ジャパン) イヤリング64万3500円 リング173万8000円/ともにTASAKI 靴10万1200円(参考価格)/ウイークエンド マックスマーラ(マックスマーラ ジャパン)鏡 クンツの書籍では、石はもともと呪術で用いられ、護符、魔除けとして身につけていたと伝えています。エジプトで紀元前のものとされる足形をしたカーネリアンの護符が出土していますが、現在でもカーネリアンは健康によい石とされているので、感覚が今も昔も同じというのが面白い。
とよた 古代からパワーストーンの考え方は受け継がれているんですね。
“占星術や医学でも「石の力」は活用されました”(鏡リュウジさん)鏡 パワーとは、生命力を指しているのかもしれません。西洋では、石は生きているという考え方が中世まで信じられていました。それを反映しているのが錬金術。石や鉱物も成長する生き物だと考えていた節があります。また、星は万物を養育する力があり、石も星の光を養分として成長すると一部で考えられていました。だから、ある種の石は星の美しい光を映したような色があると。
医療、美容、自然崇拝のお守り――
古今東西「石の力」はずっと信じられてきた
鏡 ルネサンス時代には、占星術と医学に石が活用されました。たとえば土星の力が強く働くと体が冷え、気分も暗くなる。その治療法の一つとして、きれいな白い石に護符を刻んで持ち歩くのがよいとされました。その説を推奨していたのが、イタリアのメディチ家に仕えていた、マルシリオ・フィチーノ。占星術師であり、医者、哲学者としても活躍し、プラトンの著作とともにヘルメス文書と呼ばれるオカルト的な古代の文献を翻訳し、プラトンアカデミーを創設した知性派の人物です。
占星術と石との密接な関係は、東洋にも見られます。インドでは、古代から現代まで星の配置が悪いときには石を買う風習があり、9つの惑星と9つの石を対応させて、開運や魔除けとして活用しています。