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茹でるとそうめんのようにほぐれる金糸うりは、歯ごたえと淡泊な味を生かすレシピで

2021.09.07

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プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。一覧はこちら>>

金糸うりのそうめん、ごま辛子酢味噌和え


「金糸うりのそうめん、ごま辛子酢味噌和え」

金糸うりはアメリカ大陸原産でラグビーボールのような楕円形をしており、大きいものは30cm近くにもなります。ズッキーニと同じ品種でペポカボチャ属です。茹でてほぐすと果肉が糸状になるのでそうめんかぼちゃ、そうめんうり、糸うりなどとも呼ばれます。

8月前から出回り始めますが、外皮が厚くて堅いため保存性が高く、収穫したてのものよりも少し寝かせたもののほうが果肉の繊維がほぐれやすくなります。


「金糸うりのそうめん、ごま辛子酢味噌和え」

持ち味は淡泊で風味も薄く、シャキシャキした歯ごたえこそが特徴なので、食感を生かすように調理法も工夫します。味をつける際も外側から少し強めの味(和え衣、ドレッシングなど)でコーティングするか、薄味がよければ調味出汁や調味酢と一緒に食するのがおすすめです。

下味をきちんとつけたいのなら「夏野菜のおひたし」で紹介したように、茹でてほぐした後、下漬け調味出汁に4時間ほど漬けるとよいでしょう。炊いて味をつけない理由は、炊くと柔らかくなって食感が失われるからです。

スーパーマーケットなどでは丸のままではなく、切って売っていると思います。できれば枝元のほうではなく尻のほうを、そしてあまり小ぶりに切られていないものを選びましょう。小ぶりなものだと果肉の繊維を長く取ることができません。

洪自誠(こうじせい)が著した中国古典のひとつ『菜根譚(さいこんたん)』に「醲肥辛甘非真味(じょうひしんかんはしんみにあらず) 真味只是淡(しんみはただこれたんなり)」という言葉があります。今回の金糸うりにぴったりです。濃い酒、脂っこいもの、辛いもの、甘いものは本当の味ではない。本物の味は淡い味の中にあるというわけです。この言葉が収められている『菜根譚』とは野菜の根の話という意味で、野菜の根は堅くて筋が多いが、それを苦にせずよく噛めば世の中の真の味を理解できるという意味だそうです。野菜料理は真実に通じる(笑)。

そして淡い味は淡いままで、しかもおいしくする工夫が私の役目です。今日も野菜料理を楽しみましょう。


ちょっとしたコツ


・「金糸うりのそうめん、ごま辛子酢味噌和え」は、2つ合わせて野菜料理をおいしくする7要素中7要素を取り入れている。

◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激

・金糸うりの茹で方で大事なことの1つ目は果肉の繊維を長く取れるようにすること。小ぶりに切ると繊維が短くなる。

・2つ目は繊維全部を同じ堅さに茹でて食感を残すこと。皮付きのまま茹でると皮側の繊維に火が入りにくくなり、茹で具合にムラが生じる。果肉の繊維が見えるくらいまで厚く皮をむいた後に茹でる。そして茹で過ぎない。







「金糸うりのそうめん、ごま辛子酢味噌和え」

「金糸うりのそうめん(右)」


【材料(作りやすい分量)】
・金糸うり 1/4個

・きゅうり 1本

・ズッキーニ(黄・緑) 各1/4本

・れんこん酢蓮(甘酢漬け) 8枚
新れんこんの酢蓮2種」参照

・加減酢を薄めた酢(加減酢1:出汁1) 適量
加減酢 出汁6:みりん1.5:濃口醤油0.5:薄口醤油1.5:酢1.5:柑橘酢0.5の割合

・青柚子 少々

【作り方】
1.金糸うりは尻の部分(あるいは枝元の部分)を果肉の繊維が見えるまで2~3㎝程度切り落とす。この部分は茹でても柔らかくならない。次に大きめのスプーンで種の部分を取り除く。断面を上下にしてまな板に立て、包丁で堅くて厚い皮をすべてむく。むき残しがあると口あたりが悪くなる。

2.大きい鍋に水を注ぎ、金糸うりを入れ火にかける。沸いたら中火にして6分半茹でる。

3.一度湯から引き上げ、うりを指で触ってみて繊維がなんとかほぐれそうなら取り出して、冷水に放す。ここで茹ですぎると食感が失われ台無しになる。

4.水の中で果肉の繊維をよくほぐしてばらばらにし、ざるに上げる。ほぐす際に堅い部分が手に当たったらむき残しの皮の可能性があるので除いておく。

5.きゅうりとズッキーニは長さ8cm、厚み3mmくらいのせん切りにして薄く塩をふり、5分ほどおく。れんこん甘酢漬けは甘酢から上げて半月に切っておく。

6.金糸うり、きゅうり、ズッキーニの水気をきって、すべてボウルに入れ混ぜる。そこに加減酢を薄めた酢を加えて下洗いし、ざるに上げて酢を切り軽く絞る。器に盛って上から新しい加減酢を薄めた酢を少し多めにかけ、青柚子の皮をおろし金で削ったものを、先を切った茶筅などでふりかけて供する。

※茹でてほぐした金糸うりは冷蔵庫で2日ほど保存できるので、残った場合は別の料理に使う。

「金糸うりのごま辛子酢味噌和え(左)」


【材料(3人分)】
・金糸うり 1/8個(金糸うりのそうめんで残ったものでもよい)

・三つ葉(小口切り) 1束分

・みょうが(せん切り)1個分弱

・土佐酢 適量
出汁4:薄口醤油1:みりん1:酢1の割合

・ごま辛子酢味噌 適量
ごま酢クリーム1:辛子酢味噌1の割合
ごま酢クリーム
白ごまペースト(市販品)50g 酢大さじ3 砂糖大さじ3弱
辛子酢味噌
玉味噌(白)に柑橘酢と好みの量の辛子を加える。
フルーツ酢味噌」参照

【作り方】
1.金糸うりの皮のむき方、茹で方、繊維のほぐし方は金糸うりのそうめんに同じ。

2.茹でてほぐし水気をきった金糸うりをボウルに入れ、土佐酢で下洗いする。ざるに上げて酢をきり、軽く絞ったら三つ葉とみょうがを混ぜる。

3.ごま辛子酢味噌を好みの量加えて味を整え、器に盛る。

私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。

六雁(むつかり)

榎園豊治さんプロフィール
銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。

六雁 むつかり

東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (昼)12時~14時 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:http://www.mutsukari.com

六雁 むつかり 料理長、秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。
文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗
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