書・文=中村桂子(生命誌研究者)
母親たちは赤ちゃんを子宮の中で大切に育てます。
自分とは別の存在である胎児が排除されない仕組みを支えているのは胎盤です。母子を区切ったうえで胎児に酸素と栄養を送り、老廃物を受け取る役割をします。
この、とても大事な胎盤をつくり、はたらかせる遺伝子がウイルスから来たというのですから驚きます。
病原性を持つものもあるので、ウイルスは悪者に見られがちですが、本来、さまざまな生きものの間で遺伝子を運ぶ役割をしている存在なのです。
生きものに新しい能力を与え、進化や多様性を生み出してきました。生きものの世界は複雑で興味深く、学ぶことがたくさんありますね。
『家庭画報』2021年10月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。