癒やしの絶景美術館 第2回(全12回) 非日常感を味わいながら、心を癒やし、明日への活力をチャージする場所として美術館を楽しんでいるかたも多いことでしょう。展示作品はもちろんのこと、そのロケーションや建物も一体となってアートを堪能でき、心癒やされる美術館を全国各地で探しました。
前回の記事はこちら>> [石川・金沢]国立工芸館
建築もアートな美術館へ
美術館のシンボルとなる建物そのものが、アートとして一見の価値あり、と注目されるスポットが増えています。地元で時を刻んできた建物が匠の手で再生されたり、新たにできた建築が地域に活気をもたらすきっかけとなったり……。全国各地、個性豊かな建築が話題の美術館へご案内します。
工芸の街・金沢で鮮やかによみがえった明治建築
緑の窓枠と白壁のコントラストがまぶしい旧陸軍金沢偕行社。管理棟として使用されている(現在は非公開)。左側が展示棟となる旧陸軍第九師団司令部庁舎。異なるデザインの瓦葺き屋根など比較しながら明治の建築意匠を見ることができる。藩政期からの伝統的建造物が並び、石川県立美術館や金沢21世紀美術館など数々の文化施設が集積する「兼六園周辺文化の森」エリアに、2020年10月、工芸の粋を集めた「国立工芸館」が東京から移転開館しました。
近代工芸の殿堂ともいえる作品が工芸の盛んな街・金沢で鑑賞できるのはもちろん、明治期の陸軍施設を移築・活用した建築の美しさを堪能できるのも魅力です。
旧陸軍金沢偕行社と旧陸軍第九師団司令部庁舎の2棟から構成される国立工芸館。一度の曳家や移築を経ての移築復元となりますが、まず目を引くのが正面右手、1909(明治42)年に陸軍の将校クラブとして建てられた金沢偕行社。
緑の窓枠、2階上部のアーチ窓、横方向の部材を多く入れて水平線を強調するなど華やかなバロック風の意匠です。床下換気口に施された旧陸軍の五芒星(星形)装飾など細部も再現され、当時の建築の特徴が見られます。
一方、1898(明治31)年に金沢城内に建てられた第九師団司令部庁舎は、こげ茶と白のシックな色調で簡素なルネサンス風の外観。玄関、欅造りの階段、師団長室などの木造部分が移築整備されています。
両翼にあたる部分は、前の移築の際に撤去されてしまいましたが、このたび鉄筋コンクリート造りとして復元され、その部分が展示室となっています。両建物とも解体工事の際に、建築当初の色が判明。復元前は窓枠が薄桃色や灰色でしたが、こげ茶と緑という元々の色彩を忠実に再現し、当時の面影を今に伝えています。
下のフォトギャラリーから詳しくご覧ください。 Information
国立工芸館
石川県金沢市出羽町3-2
- 企画展の観覧料は展示内容によって異なる。 ●2021年9月26日まで「所蔵作品展たんけん!こども工芸館 ジャングル⇔パラダイス」を開催中。
各美術館の開館時間、休館日、展示期間、展示内容等は変更になる場合がございます。お出かけ前に美術館の公式ホームページ等をご確認ください。 撮影/角田 進 取材・文/直江磨美
『家庭画報』2021年10月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。