ようこそ、ジュエリー美術館へ 第6回(全20回) 見る人、装う人に愛と夢を与え、胸を高鳴らせるジュエリー。今、時代が、世界が、ジュエリーの持つポジティブなパワーを求めています。輝き、色彩、めくるめくデザインを集めた美術館の扉が、ここに開きます。
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あらゆる市場において、今、ジュエリーの動きが活発です。なぜ、人々はハイジュエリーにこんなにも惹かれるのでしょうか。名門オークションハウスに稀少なジュエリーの魅力、オークションの現状を伺いました。
「一期一会のレアピースに出合えるのがオークションの醍醐味」
クリスティーズ 宝石担当 笠原可名さんかさはら・かな◎シンガポールで米系投資銀行を経て、クリスティーズの宝石部門担当に。日本拠点のジュエリーコレクターと海外オークションを結ぶ役割を担う。愛しいジュエリーに出合う新たな方法に
コロナ禍で、稀少なジュエリーに出合うことのできる方法として注目を浴びているのが“オークション”の世界です。「会場でのオークションが開催できない現状においても、全体の落札率は好調です」と、クリスティーズの笠原可名さん。
「オンラインセールへの参加者が増えたのも理由の一つでしょうか。これまではオンラインでは出品されなかった高額品も昨年から取り扱われるようになりました。例えば、ニューヨークで約2億3000万円で落札された28.86ctのダイヤモンドもその一つ。また、ロックダウン中のパリでは全作品をオンラインオークションに切り替えて出品。結果、世界中からオークションに参加できるようになり、盛況に。みなさん、自宅にいる時間が増えたのも、その理由かもしれませんね」。
そんなオークションの醍醐味は、やはり“稀少性”。その一例が、2018年に出品されたカシミール産サファイアのピーコックネックレスで「もとの所有者が100年をかけて集めたカシミール産のサファイアが用いられています。時間をかけて築き上げた稀少性を持った、オークションならではのピースということができるでしょう」。
次の世代へと渡すロマンティックなときめき
オークション会場。オークショニアは宝石部門最高責任者ラフール・カダキアさん。オークションでは“来歴”も大切なポイントに。例えばエリザベス・テイラーなど著名コレクターが旧蔵した宝石にまつわる物語など、心踊る楽しさに出合うことができます。
「分散的な資産形成を目的とする男性のかたも増えましたが、圧倒的に多いのはやはり女性で、身につけたり、そばで愛でる喜びを覚えるかたが多くいらっしゃいます。年月を経ても色あせない、不変的な美しさは宝飾ならではの魅力です。ご購入者とご出品者、その両方が大切なお客さまです。心から愛した大切な品をお預かりし、次世代へ渡すのが私たちの重要な役割だと思っています」
その見事な輝きが2021年の香港でトップロットに
「THE SAKURA」の名を持つ15.81ctのパープル・ピンクダイヤモンド。約32億円で落札。
世代を超えて受け継がれるレアピースのサファイア
2018年、カシミール産サファイアでは史上最高の落札額となったネックレス(約17億円)。
メゾンの職人技を求めるコレクターの姿も
2017年に出品された「ヴァン クリーフ&アーペル」のバレリーナ クリップ。
Information
オークションの入札方法
- 作品詳細や予想落札価格をカタログやウェブサイト(www.christies.com)でチェック。その後プレビュー、動画・画像などで作品の詳細を確認し、オークション会場での入札、事前に書面でアブセンティビッド、電話中継によるテレフォンビッド、オンラインの4つの方法で入札します。
写真提供/Christie's Images Limited 2021
『家庭画報』2021年10月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。