人間の体の大本である「細胞」。そのはたらきを理解して日々のケアに役立てるという考え方が、新たな美容・健康へのアプローチとして期待されています。「細胞再活性化」は注目したい最先端のアンチエイジングトピックスです。
“美と健康のために、目指すは1日50g”
たんぱく質を摂っていますか?
昨今よく耳にする「たんぱく質を摂ろう」というフレーズ。肌のハリ、ツヤ、若々しいボディラインをキープするために毎日たんぱく質50gを
※1といった美容記事を読んだ人もいるでしょう。
しかし、肌や髪、筋肉から心臓、腸、血液にいたるまで、体のあらゆるパーツがたんぱく質でできているというのに、1日50gだけでOKなのは“なぜ”でしょう?
体のあらゆるパーツは、たんぱく質でできている。「その“なぜ”を知ることが、最新のアンチエイジング、『細胞再活性化』を知る“手がかり”につながります」と語るのは、大阪大学大学院で細胞生物学的研究を行う吉森保先生です。
気になるキーワード「細胞再活性化」の前に、体の最小単位である「細胞」についてお話を。
37兆個の細胞でできている人間の体、すべての細胞は主にたんぱく質でできている
「私たちの体は37兆個の細胞で構成されており、その細胞一つひとつを構成する成分で、水の次に多いのがたんぱく質です」と吉森先生。
「そして、ひとことでたんぱく質といっても、体内には数万種を超えるたんぱく質が存在します。たんぱく質は『栄養』、『体を作る成分』とのイメージが強いかもしれませんが、『体を機能させる成分』でもあります。血液や胃腸ではたらく抗体や、各種の酵素、ホルモンといったものは細胞が作り出すたんぱく質ですし、細胞の内部では、さらにさまざまなたんぱく質がはたらいています」(吉森先生)。
そう聞くと、口から摂るたんぱく質が1日50gで足りる理由に、ますます興味が……!
細胞内のリサイクルシステム、「オートファジー」が細胞の活動を維持している
「私の研究対象は、オートファジー。私の師である大隅良典先生が2016年のノーベル生理学・医学賞を受賞した研究分野です。オートファジーは、簡単にいうと、細胞内のリサイクルシステムです。
細胞内部のたんぱく質からミトコンドリアなどの細胞内小器官まで、さまざまなものを分解し再利用することで、細胞の機能維持に深く関わっています。例えばたんぱく質はアミノ酸に分解され、そのアミノ酸を使って新しいたんぱく質がつくられます。このオートファジーなど
※2のリサイクルシステムによって生み出されるたんぱく質は、1日に240gほどといわれています」(吉森先生)
細胞内部にリサイクルする仕組みがあることにより、タンパク質などのパーツが日々少しずつ新品に入れ替わり、毎日50g程度のたんぱく質を補うだけでも過不足なく健康的な体を保つことができる、というわけです。
オートファジー研究は日本が世界をリードしている。吉森先生の論文のひとつはオートファジー分野で引用された回数が世界1位(2019年5月現在)。私たちを構成する最小単位である「細胞は、たんぱく質が作り、動かしている」。「その維持にはオートファジーが鍵を握る」ことがわかりました。