プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。
一覧はこちら>> 冬瓜のふろふき2種
冬瓜は初夏より出回り、夏から初秋が旬ですが、皮が堅く冷暗所で保存すれば冬まで日持ちすることから冬瓜と呼ばれるようになったのは、以前お話ししたとおりです。実際は冬まで持つということはありませんので、今日は名残の冬瓜料理ということでふろふきを紹介します。
ふろふきといえば、野菜を大きめに切って茹でたり炊いたりし、調味料を加えて練った味噌をかけて食べる料理です。冬の大根が有名ですが、かぶ、冬瓜などでもおいしいものです。
以前、お教えした「
冬瓜の揚げ煮」を少し薄味に炊いて、秋の風情をもたらし、風味を加える焼き目をつけて、あつあつの味噌をかけて供します。味噌は冬瓜に合う生姜を使った生姜味噌と、旨みと食感があるごま味噌にしました。
調味全般に関するコツですが、夏はどちらかといえば、塩を用いたさっぱりした調味にし、秋からは同じ塩分でも醤油の比率を増やし、旨みも強めにしていきます。旨みが強くなると味が重たくなり過ぎる恐れがあるので、酸味で軽くするなどの工夫も必要です。
今回は旨みの強い味噌に対して名残のみょうがを甘酢漬けにしたものを添え、全体として軽やかな味わいになるようにしました。朱を巻いた椀に盛り付け、秋たけなわの風情にしています。
日本人だからわかる季節の移ろいを映し出すのが旬。走り、盛りを過ぎ、来年も、また食べられたらと名残惜しむ想いとともに、日本人の野菜料理を楽しみましょう。
ちょっとしたコツ
・「冬瓜のふろふき2種」は、野菜料理をおいしくする7要素中7要素をクリア。
◎旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り ◎刺激
・味噌をのせる分、冬瓜の揚げ煮は調味料を減らし薄味に炊く。
・味噌は冬の料理のようにたっぷりのせるのではなく、少なめにのせることで、冬瓜の揚げ煮との調和をはかる。
・みょうがの甘酢漬けなどの酸味を添えると、重たくなりがちな味が軽くなり、全体としてまとまる。
「冬瓜のふろふき2種」
【材料(3人分)】・冬瓜の揚げ煮 6切れ 「
冬瓜の揚げ煮」参照
冬瓜の揚げ煮(薄味)作りやすい分量:
・冬瓜(皮をむいたもの) 正味300g
・出汁 500cc
かつお節と昆布の出汁でも、ベジタリアン用は昆布出汁でもよい
・塩 1g
・薄口醤油 小さじ2
・みりん 小さじ1
・揚げ油 適量
・赤唐辛子 適量
・生姜味噌 適量 「
玉味噌、生姜味噌」参照
・ごま味噌 適量
玉味噌(白) 50g、刻みいりごま 小さじ2
・みょうがの甘酢漬け(赤い外皮部分) 6枚 「
みょうがの甘酢漬け」
【作り方】1.冬瓜は薄めの味の揚げ煮にする。
2.玉味噌(赤)に生姜のみじん切りを加えて生姜味噌にする。
3.玉味噌(白)に、市販のいりごまを軽くいり直して粗刻みしたものを加えて混ぜ、ごま味噌にする。
4.冬瓜の揚げ煮はあつあつに温めたものを出汁から上げて、予熱したグリル(オーブントースターでもよい)で強火で焼いて焦げ目をつける。
5.生姜味噌とごま味噌は出汁(分量外)を少量加えて好みの堅さにのばして、蒸し器または電子レンジで温める。
6.冬瓜を器に盛り、生姜味噌とごま味噌をそれぞれのせ、みょうがの甘酢漬けを添えて供す。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。 六雁(むつかり)
榎園豊治さんプロフィール銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。
東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (昼)12時~14時 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:
http://www.mutsukari.com連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。 文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗