便の形や色をチェックする習慣をつけよう
便の黄色や茶色は主に胆汁に含まれるビリルビンの色です。便の色は飲食物に影響を受け、水分が多いほど色が薄くなる傾向があります。
医学的な便の評価には「ブリストル便形状スケール」(下の表)が使われます。
便のタイプ・形状(ブリストル便形状スケール)
「3〜5が正常範囲で、必ずしも4のようにきちんと固まった一本のものでなくてもいいのです。誰にでもわかりやすいスケールですから、自分の便を見て、どれに当たるかチェックしてみてください。腸の調子が気になる人は、便の色や形状、排便の時刻や回数、おなかの痛みや不快感、残便感の有無を食事や運動、睡眠、月経周期、薬の服用状況などとともに日記につけておくと体調の変化がわかるようになります」と鳥居先生。
なお、毎日の排便回数は日常生活に支障がなければ何回でもよいそうです。
ただし、便に血が混じっている、下痢を短期間に何度も繰り返す、下痢に吐き気や嘔吐を伴う、便が3日以上出ず腹痛があるといった状態の場合、下の表のような病気が隠れていることがあるので、診察を受けましょう。
起こりやすい、あるいは重大な腸の症状や病気
●慢性便秘症
排便回数が少なくなって、排便時に苦痛を伴う状態。臨床的には3~4日以上排便がなく、おなかの張りなどの不快な症状があり、日常生活に支障がある場合を指す。
排便時の息み、硬い便、残便感などが診断の目安。原因がはっきりしない便秘と、大腸がん、腸の炎症、薬剤など原因が明確な便秘がある。
●過敏性腸症候群
慢性的に腹痛や腹部の不快感があり、下痢、便秘、あるいは下痢と便秘の両方を繰り返す。腹痛や腹部不快感は便やおならが出ると改善する。
腸の検査をしても特に病気は見つからないが、腸管のけいれん、直腸付近の知覚過敏などが背景にあることが多い。頭痛やめまい、動悸などを伴うこともある。
●憩室炎
大腸壁の一部が飛び出して袋状になり(憩室)、内視鏡検査で発見されることがある。通常は無症状だが、腹痛、便秘やおなかの張りが起こる場合がある。
憩室に細菌が入り込み、炎症が起きると腹痛、血便、微熱といった症状が出る。憩室は右側にできやすく、加齢によって左側にもできやすくなる。
●虚血性大腸炎
突然の激しい腹痛とともに真っ赤な鮮血便が出る。多くは左腹部が痛む。吐き気・嘔吐、発熱、冷や汗が出ることも。
高血圧や糖尿病、脂質異常症などによって進んだ動脈硬化、脱水、下剤などが引き金となり、腸管の一部への血流が落ちて、そこに炎症が起こっているのが原因。
●感染性腸炎
ウイルスや細菌への感染によって腸に炎症が起こる。吐き気や嘔吐、激しい下痢、腹痛、発熱などが症状としてあらわれる。
ロタウイルス、ノロウイルス、インフルエンザウイルス、病原性大腸菌O157、カンピロバクターなどが原因。
飲食物のほか、嘔吐物や便が手指について感染することが多い。主に海外で感染するコレラ菌や赤痢菌、チフス菌にも注意が必要。
●大腸がん
大腸の粘膜にできるがんで、大腸下部のS状結腸や直腸が好発部位。初期にはほとんど症状がなく、便潜血検査で見つかることが多い。
内視鏡検査によって大腸ポリープ(大腸の粘膜にできるイボのような腫瘤)のがん化が判明することもある。
進行するにつれて鮮血便や黒色便、便秘、下痢、腹痛、体重減少などの症状が悪化する。肉を多く食べること、大量飲酒、喫煙などが危険因子。