これまで明らかになった調査結果
1.制作過程作品「Tableau No. 1」の研究の中で、作品に署名された「P M 21-25」という日付を、赤外線リフレクトグラフィーを利用して見ると、塗料の下に別の日付があることがわかり、1921~25年に描かれた絵画が実はそれよりも前の1920年に描かれていた可能性が高いことが明らかに。
これにより、ピート・モンドリアンが幾度も手直しを加えることで新しいアイデアを引き出し、独自の美意識に見合う作品を作り出そうとしていたことがわかり、彼のアート活動の基礎は「様式を発展させていくこと」だという見解が堅固なものになりました。
また、1930年から1932年の間に「Composition with Yellow and Blue」と同様の構図を3つの異なる絵画に用いながらも、配置、大きさ、線など、それぞれの構成要素が絶妙に調整されて異なっていて、全く違った効果が生まれていたことが、デジタル画像処理プログラムで絵画を重ねることで解明されました。この発見からも、試行錯誤しながら完璧を追い求めるアーティストの姿勢が伝わります。
「Composition with Yellow and Blue」(1932) 油彩、カンヴァス 撮影/Robert Bayer. ©2020Mondrian/Holtzman Trust.2.直感と精密さの調和ピート・モンドリアンは拭き取る、引っ掻く、こするなどの手法の数々からもわかるように、色や線に関するアイデアを探究し、それらをキャンバスの上で直接表現しました。
作品「Tableau No. 1」における赤外線リフレクトグラフィーからは、塗料の下に定規と鉛筆ではっきりと描かれた格子を見ることができ、オリジナリティあふれる美しい構図が、非常に複雑な下描きから生み出されたものだとわかりました。
また、「Composition with Double Line and Blue」と「Tableau No. 1」に関する研究では、すべての線の横幅はほぼ均等で、すべての角度は完全に直角であることも示されました。
これらを下描きなしで作り出すのは非常に難しく、彼が芸術家の感性で“完璧な調和”を実現しようとする一方で、精密な道具の力も借りていた可能性が明らかに。
ピート・モンドリアンは、新しい手法を試すことを恐れずにさまざまな検証を行いながら完璧を目指し、“精密さ”を理想を叶えるために重視していたのです。
時を超えて明らかになった事実は、作品鑑賞をより意味深いものにしてくれるでしょう。「ラ・プレリー」が支援する4作品は2022年にバイエラー財団が開催するスイス最大級のピート・モンドリアン展で披露される予定です。
そして、“革新的な手法を用いて検証し、精密さを取り入れながら最高水準を目指す”というピート・モンドリアンが追求した美への姿勢は、「ラ・プレリー」の製品づくりや本質的な要素とこれからも共鳴し続けるのです。