プロよりおいしく作れる 野菜料理の“ちょっとしたコツ”365 身近な野菜で、プロよりおいしい野菜料理を作ってみませんか? 銀座の日本料理店「六雁(むつかり)」の店主・榎園豊治(えのきぞの・とよはる)さんに、家庭だからこそ実践できる“ちょっとしたコツ”を毎日教わります。
一覧はこちら>> にんじん葉飯、にんじんとにんじん葉のかき揚げ
にんじん葉をご存じでしょうか?「
秋の切り干し大根」で既に使用していますが。小さく繊細な葉でにんじんというよりは、せりに似た風味があります。それもそのはず、にんじんはセリ科にんじん属でせり、パセリ、セロリの仲間なのです。別名はにんじん菜、葉にんじんで、かつては間引きによって採られたものでした。まだ一般的な野菜にはなっていないかもしれませんが、最近は水耕栽培されるようになりスーパーマーケットでも目にするようになりました。
間引きのものは、根の部分に細い小さなにんじんができているのが特徴です。根であるにんじんが成長すると葉は堅くなっていますが、その前に間引いたにんじん葉は、柔らかくて食べやすい。ただ、間引きされた時期によって軸の堅さが変わってくるので、堅い場合は根元近くの太い部分は切り捨て、上の部分も細かく刻んで調理します。
水耕栽培のものは通年、出回っています。根がにんじんになる前に収穫されているので、軸も柔らかく、葉は生のままでも食べられます。
栄養面でいうと、にんじん葉はビタミンA、たんぱく質、カルシウム、脂質、ビタミンE、カロテン、鉄分が、どれもにんじん(根)よりも豊富に含まれています。
店頭でにんじん葉を見かけたら、ぜひ一度お試しください。その風味にやみつきになるかもしれません。今日紹介する料理以外に、和えものなどに加えても大変おいしいです。野菜料理の楽しみ方を増やしましょう。
ちょっとしたコツ
・「にんじん葉飯」は、野菜料理をおいしくする7要素中6要素を取り入れている。
◎旨み ◎塩分 甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り 刺激
・飯を炊く昆布出汁には味をつけず、上からかけるたくあんの塩味、にんじん葉の風味、いりごまの油分と香ばしさでおいしくする。一椀の中に味の強弱を作る。
・「にんじんとにんじん葉のかき揚げ」は、野菜料理をおいしくする7要素中5要素を取り入れている。
旨み ◎塩分 ◎甘み ◎油分 ◎食感 ◎香り 刺激
・にんじん葉の香りを残しながら、カリッとしたかき揚げに仕上げにするために、にんじんは細めに切る。
・にんじん葉もにんじんのせん切りも細長いので絡まってバラバラになりにくい。それを利用して、繊維1本1本を広げるように揚げて、カリッとした仕上がりにする。
「にんじん葉飯」
【材料(2人分)】・米 1合
・昆布出汁 180cc
・にんじん葉 50g
・たくあん漬け(甘くないもの) 2~3cm
・とんぶり 小さじ1
・いりごま(市販のものをいり直す) 大さじ1
【作り方】1.米は炊く30分以上前に研いでざるにあげておく。昆布出汁を加えて炊く。
2.にんじん葉は水耕栽培であれば根の部分を除いてそのまま、軸が堅いようであれば根元近くの太い部分は切り捨てる。湯を沸かし、にんじん葉を入れてさっと茹で冷水に放す。冷めたら水から上げて水気を両手で絞り、5mm~8mmに刻む。
3.たくあんは5mm角に切る。とんぶりは粒が細かいので目の細かい茶こしに入れたまま沸いた湯の中に入れて、20~30秒茹でて冷水で冷やし水気をきる。
4.ボウルににんじん葉、たくあん、とんぶり、軽くいり直して香ばしさを出したごまを入れよく混ぜる。
5.炊き上がった飯を椀に盛り、4をかける。
「にんじんとにんじん葉のかき揚げ」
【材料(2人分)】・にんじん葉 15g
・にんじん 30g
・揚げ油 適量
・天ぷら衣
薄力粉100g、冷水100cc、卵黄1個
【作り方】1.天ぷら衣を作る。ボウルに入れた冷水に卵黄を加え、泡立て器でときほぐす。そこに薄力粉を加えて粘りが出ないようにさっくりと混ぜる。ベジタリアンは卵を用いなくてもよい。
2.にんじん葉は長さ3~3.5cmに切る。にんじんは皮をむいて2mm弱角×5cm長さくらいのせん切りにする。
3.にんじん葉とにんじんをボウルに入れて、少量の薄力粉(分量外)をまぶす。
4.3に天ぷら衣を適量加え、全体が均一になるよう混ぜる。
5.180℃に熱した揚げ油の中に、4を小さなお玉で静かに入れていく。170℃前後で揚げたいので、油の量にもよるが最初は180℃にしておき、ネタを入れた後に170℃になるように火加減を調整する。
6.通常のかき揚げは油の中でたねが広がってきたら、箸で寄せるが、この場合はやり方が異なる。最初は繊維1本1本を、揚げ油全体に広げるようにして揚げる。その後、箸に引っかけて回し、まとめてかき揚げの形にする。しばらくしたら、裏返して揚げる。
7.油をよくきって、塩(材料外)で供する。
私たちプロの料理人の中には、色や見た目を味より重視する者もいます。薄味信仰?なのか、本当は少し濃いめの味にしたほうがおいしいものでも、それは恥と、濃いめの味つけを避けます。また、味を素材にしっかりと含ませることがプロの料理と、無理に味をつけなくてもおいしい素材に味をつけて台無しにしてしまうこともよくあります。何より、皆さまがおいしいと思う味にしてください。人の味の好みは様々です。ご自身・ご家族の好み、体調に合わせた味に調整しましょう。レシピに示す調味料などの分量は一例に過ぎません。注目していただきたいのは素材の組み合わせと料理手順、どんな調味料を使うのかということです。味の加減は是非お好みで。 六雁(むつかり)
榎園豊治さんプロフィール銀座並木通りにある日本料理店「六雁」初代料理長であり、この連載の筆者でもある榎園豊治さんは、京都、大阪の料亭・割烹で修業を積み、大津大谷「月心寺」の村瀬明道尼に料理の心を学ぶ。その後、多くの日本料理店で料理長を歴任、平成16年に銀座に「六雁」を立ち上げた。野菜を中心としたコース料理に定評がある。
東京都中央区銀座5-5-19
銀座ポニーグループビル6/7F
電話 03-5568-6266
営業時間 (昼)12時~14時 (夜)17時30分~23時 ※土曜日のみ17時~
(営業時間は変更になることもあります。事前に店舗にご確認ください)
URL:
http://www.mutsukari.com連載でご紹介する料理を手がけてくださる、現料理長・秋山能久(あきやま・よしひさ)さん。 文/榎園豊治 撮影/大見謝星斗