11月 本手利休斗々屋茶碗
《本手利休斗々屋茶碗(ほんてりきゅうととやちゃわん)》朝鮮時代(16世紀)「大名物」に数えられる古来有名な茶碗の一つ。「斗々屋」は朝鮮で焼かれた高麗茶碗の分類名で、朝鮮半島で用いられていたものを、日本で茶の湯の茶碗に見立てたと考えらえる。代表的な碗形の「本手斗々屋」のほか、「平斗々屋」、「古斗々屋」などがある。
明治時代に小堀家から、検事や元老院議官、貴族院議員など歴任した渡辺 驥(すすむ)に伝わり、明治37(1904)年、藤田家に収まった。
選・文=藤田 清(藤田美術館館長)千利休が見出し、弟子の古田織部へと伝わった。織部は、戦の資金捻出のため、泣く泣く質へと出してしまう。師から譲り受けた茶碗。いつか手元に取り戻したかったのか、仕覆は手元に置いたまま。
しかし、質から出したのは織部の弟子、小堀遠州である。戦を終えた師をこの茶碗でもてなした。弟子の気遣いと成長を喜んだ織部は、懐から出した仕覆を遠州に譲った。
利休、織部、遠州。それぞれの時代で頂点を極めた三人の茶人を渡ったこの茶碗は、特徴のない事が特徴ともいえるほど静かな景色。だからこそ師弟の物語が際立つ。
作品のエピソードトーク
動画で藤田 清館長と谷松屋戸田商店の戸田貴士氏による、本作品のエピソードトークをご覧いただけます。
撮影/小野祐次 構成/安藤菜穂子
『家庭画報』2021年11月号掲載。
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