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錚々たる書き手17名が“短文”を寄せたアンソロジー『kaze no tanbun 夕暮れの草の冠』

2021.11.08

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〔今月の本/短文アンソロジー〕
『kaze no tanbun 夕暮れの草の冠』西崎 憲 編

西崎 憲

西崎 憲
1955年青森県生まれ。作家、翻訳家、音楽レーベル主宰。2002年『世界の果ての庭』で第14回日本ファンタジーノベル大賞を受賞。『ヘミングウェイ短篇集』など訳書多数。

本を買って、読むことの喜びを
改めて実感できる短文集



深いグリーンの布装丁に、金箔押しの小さなタイトルと流麗な図案。手に取らずにはいられない、美しい本だ。

手がけたのは、作家・翻訳家の西崎 憲さん。『kaze no tanbun 夕暮れの草の冠』というタイトルのもと、西崎さんを含めた17名の錚々たる書き手が短文を寄せている。

「現代のとても優れた書き手が手枷足枷を外して自由に書くと、どういう文章が生まれるのか。それが知りたかった。自分が短歌やアフォリズムなどの短い文章がとにかく好きであることと、エッセイや小説などと中身を規定しないという意味で、“短文”を集めました。みなさん文章の達人ですので、何を書かれても興味深い。だからあえて“おもしろくなくていいです”などといいつつ依頼しましたね」

その書き手とは、青木淳悟、円城 塔、大木芙沙子、小山田浩子、柿村将彦、岸本佐知子、木下古栗、斎藤真理子、滝口悠生、飛 浩隆、蜂本みさ、早助よう子、日和聡子、藤野可織、松永美穂、皆川博子。西崎さんが選んだ。

「文だけで“世界”や“時間”をつくることができる書き手を念頭に置いて考えました。それにしてもすごいメンバーですよね。何度見ても、わくわくする名前の並びです」

原稿は、書き手から西崎さんに直接送られた。最初の読者が西崎さんなのだから、さぞかし書き手の腕は鳴ったことだろう。

実はこの本、目次が本の最後に置かれている。最初から読み進めると、それぞれの短文が誰の手によるものなのかがわからない仕組みだ。

「作者名を知らない読書というのはあまりない経験だと思うので、そのスリルを味わってほしいと思いました」

本のところどころに作中の文章がエピグラムとしてちりばめられていたり、寄稿者の文章が印刷された切手シートプレゼントの応募ハガキが挟まれていたり。気づくと顔がほころぶような、さまざまな嬉しい工夫もある。

企画段階から担当編集者とデザイナーの奥定泰之さんの3人で進め、小さなアイデアも相談しながら決めたという。

「装丁は、デザイナーの奥定さんに全面的に頼っています。雨の日や雪の午後など、読書に向いた環境というものがあると思うのですが、布の感触や栞紐の色、本文の上下の余白といった工夫で、それに近い環境をつくれないだろうかと考えました。たとえば寝台列車で読むような、深い読書を楽しんでいただければと思います」

伸び伸びとつくられた本が手中にあることは、なんと豊かなことだろうか。

『kaze no tanbun 夕暮れの草の冠』

ブックデザイン/奥定泰之

『kaze no tanbun 夕暮れの草の冠』西崎 憲 編 柏書房

当代随一の書き手による、ジャンルも文体もさまざまな短文を収めた西崎 憲プロデュースによるアンソロジー「kazeno tanbun」シリーズ3冊目の完結編。遡って前2冊も手に取りたくなる。

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構成・文/安藤菜穂子 撮影/本誌・中島里小梨(本)

『家庭画報』2021年11月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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